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電磁波干渉と航空機の運航電磁波干渉と航空機の運航

電磁波干渉と航空機の運航
(電磁波干渉ってなに?)

1.電磁波干渉(Electro Magnetic Interference)とは
 一般的な「電磁波干渉」というと、雷のような自然現象から、人間が製造した各種の電気電子機器が発生するノイズによって、他の電子機器に好ましくない障害が発生する事を指します。分かりやすい現象としては、雷による中波ラジオへの雑音、電気モーターによるTV受像の乱れなどの「意図しない電磁波」による障害や、違法無線によるFMラジオへの混信、電子制御装置の誤作動、などのような「意図的な電磁波」による障害があります。

 これらすべてを、我々が包括的に理解する必要もありませんので、ここでは、最近の航空機の運航に障害となるもののみに、的を絞って考察したいと思います。

2.意図された電磁波?意図しない電磁波?
 「意図された電磁波」とは直接的にはアマチュア無線機、携帯電話などがありますが、あまり知られていないものには、受信機(ラジオ)の内部で作られている「中間周波数」なるものもあります。これは「スーパーヘテロダイン」とか「局発」とか航空級無線通信士の試験でお目にかかった(事があるかもしれない??)理屈によるものですが、電子機器の設計段階から、わざわざ発生させているものですから、「意図的な電磁波」です。

 これらの「意図された電磁波」は、発生する側の電子機器も、航空機側もほぼ対策を施しているので、ここではとりあげません。

 「意図しない電磁波」がやっかいものです。これにもいくつかの種類があります。

 ひとつには、「意図された電磁波」が副次的に発生させる電磁波です。これは「高調波」とか「ふく射(スプリアス)」とかいわれるもので、例えば50MHzのアマ無線機から100,150MHzといった、目的外の周波数の電磁波が発射されたり、FMラジオの中間周波数(10.7MHz)の倍数の電磁波が漏れたりするものがあります。

このような「目的外の電磁波ふく射」はある程度予測可能です。

 他方では完全に「意図しない電磁波」として、大電流機器のON/OFFによるスパイクノイズや、話題のパソコン・CDプレイヤーなどの「マイクロエレクトロニクス機器」からの「電磁波」があり、これらが大きな問題となっています。

3.マイクロエレクトロニクス??
 すぐにも陳腐化しそうな言葉ですが、他に適当な分類が確立していませんので、こう表現されています。

 どんなものかというと、「小さくて、いろんな機能がついている、電気で作動するもの」と考えれば当たらずとも遠からず、と思ってください。パソコン、携帯電話、CDプレーヤー、電子ペット(ファービー)、ポケットゲーム機、、、、これらのものにはすべてマイクロエレクトロニクス≒「コンピューター」が組み込まれています。

 「コンピューター」が作動するためには必ず「クロック」と呼ばれる数MHz以上の方形波(デジタルと考えてもよいでしょう)と、信号のやりとりとしての方形波、の2種類のパルスが発生します。

理科の教科書には、正弦交流波により発生する「電界」がよく描かれますが、「電磁波」は電流が変動する時に発生するものですから、これらの方形波の立ち上がりと立ち下がり時にも「電磁波」が発生するわけです。

つまりマイクロエレクトロニクス機器には、クロックに関わる周期的な「電磁波」と、信号(情報)による不規則な「電磁波」が必ず付随しているわけです。

4.不要電磁波のふく射と受信
 参考で触れますが、航空機搭載機器からの不要電波のふく射については、論外というか対策済みのはずなのでここでは除外します。他には乗客による機内持ち込みの電子機器が問題となります。

 機内持ち込みで、「意図された電磁波」を発射する装置は当然アンテナを備えています。「意図しない電磁波」をふく射する装置には通常「アンテナ」はありませんが、電気の流れるところはすべて発射アンテナになり得ます。この場合の電磁波は非常に弱いもので、[参考]に掲げる航空機の設計上問題となるような、強い電界強度の何万分の一(あるいは10-6乗)程度の測定すら困難な強さです。しかしながら、そのような微弱なパワーしか持ち得ないCDプレーヤーでさえEMIを発生させているのが現実です。

参照:IATA報告事例

 では、これら不要電磁波を拾う機体側はどうでしょうか。後述するように、航空機は耐空性審査要領などによって、「外からの強い電波」には耐えられるように作られています。(機体が大きなシールド筐体ですから)しかしながら、その機体内部には、B747クラスでは数十km以上と言われるほど大量の電線が使用されており、基本的には、これらの全延長が受信アンテナとなりえます。但し、デジタル機器を結ぶARINC(エアリンク)と呼ばれる規格では、シールド線または、より安全性の高いツイステッドペア線(撚り線)を使用しています。教科書的に考えるならば、シールド線の真横にCDプレイヤーを持ってきても、何の障害も起こり得ない筈です。

 しかしながら、機体内部には様々な金属があります。これもアンテナ代用品になりえます。例えば、ある座席とその座席の固定レールがちょうどその電磁波の共鳴(共振)関係になり、さらに壁の中のリブが伝導にちょうどいい距離関係にあるかもしれません。また、曲がりくねり撚りあわされた配線、種々のコネクターによるシールド不全など、複合条件は検証しきれないほどあります。これが、同じ装置を同じように使っても、ある座席では発生したのに、その隣ではもう発生せず、コックピット内でさえ再現しない原因と思われます。

5.なぜ障害となるのか
 航空機においては、昔から知られている、雷や空電によるADF(中波自動方向探知機)の誤指示や、自らのHF(短波)送信時における油圧計の誤指示などがありますが、これらを仮に「アナログ系障害」としましょう。これらのアナログ系障害は、発生事象が割とダイナミック(はっきり分かる)で、因果関係も特定可能(再現性が高い)なケースが多いようです。

 ところが、最近話題の、コンピューターの関係する機器への障害の場合、まったく逆で、想像できないような現象が、再現性に乏しく発生しています。これを「デジタル系障害」と呼んでおきましょう。

 「アナログ系障害」は、予期されない電磁波が、本来の信号をオーバーライドしてしまったり、歪ませたりすることにより、誤作動を引き起こします。ところが、「デジタル系障害」は、「1」と「0」の組み合せである信号を書き換えてしまう事で、より重大な(あるいは極端な)誤作動となり得ます。

 航空機のデジタル信号は、+の電圧(+5から+15V程度)の時に「1」と解釈し、0または負の電圧(-5から-15V程度)の時に「0」と判断されます。この「1」と「0」の組み合せで、それぞれの電子機器のIDから、データまですべてを判断しますから、ひとつ順番が入れ替わっただけでも大変な事が起こり得ます。

 例えば、スラストレバーを動かして、N1を(ほぼアイドルの)33%にセットしようとした時、レバーを動かして、そのセンサーが「33」を出力するようにしたとします。センサーはオートスロットルコンピューターに対して「33」を意味する2進数「00100001」(仮に8ビットとします)を送るのですが、

0  0  1 0  0 0  0  1
となりますが、これに以下のようなノイズが
乗ってしまうと   0 1  1  0 0  0 0  1

これは10進法では「97」%です。

とするとエンジン制御コンピューター側では「97」%と受け取り、そのように大出力をセットするでしょう。(もちろん実際は、こんな単純な事は起こりません。概念の話です)

    参考:ARINC規格、エラーチェック

6.公的機関による規制
 航空機における規制としては、設計段階と運用段階があります。設計段階においては耐空性確保の為にいくつかのスペック(JIS,MIL,HIRFなど)があるようですが、電波暗室で航空機の機器を作動させて計測するなど、いずれもが「航空機自身に搭載の電子機器が、他の電子機器に影響を与えないか」の観点だけであり、「客室内に持ち込まれる電子機器がもたらす影響」については、何も触れられていません。

     参考:安全水準

 そこで、IATAが音頭をとって自主的に「使用させない。電源を切らせる。」措置を運用段階で行っている現状は皆さんご存じの通りです。

 日本においては、かの航空振興財団が97年より「調査」を開始している段階です。

 では、「持ち込まれる電子機器」への規制はどうかというと、国際的な元締めはIEC(国際電気標準会議)の下部機構であるCISPR(国際無線障害特別委員会)というところで検討されているようです。その検討結果に基づいて各国で様々な規格(規制)を行っています。米国にはFCC、日本ではVCCI(電波障害自主規制)などがありますが、おおざっぱに言って、「強い電磁ふく射を出さないように」設計しましょう、というものです。

    参考:規制の現状

 最近では複雑かつ、深刻な電磁波障害の現状をふまえて、いろんな電磁波と共存しよう、ということでEMC「Electro Magnetic Compatibility電気電磁的両立性」と呼ばれつつあるようです。

7.再現性に乏しいEMIとの闘い
 航空機におけるデジタル系障害が、なぜ再現性に乏しいかという明確な答えはまだありません。推測として「微弱な発生源」「デジタル信号に混じる為、同じ誤数値になりにくい」「発生したときと同じ状況を創りにくい」などが揚げられます。

 従って、我々乗員がとりうる最大限の措置は、発生した瞬間の機外機内の状況を記録する事ですが、かなりの制約を受けるでしょう。せめて、機内捜索を行い、使用されていた機器の特定、使用方法、使用場所を記録する必要があります。

 では防止策はどうでしょうか。「不要電磁波を受け付けない機体構造とする」「EMCの発想で共存性を確保する」「電磁波を持ち込ませない」の3点が考えられます。

測定限界以下の微弱な、しかも不連続突発的なパルス波をとらえることは、現時点では不可能です。となれば、機体内部のすべての配線をシールド付きのツイステッドペアにする方法が考えられますが、機体重量の増加と配線スペースを考えると設計からやり直す必要があります。

「共存する」方法としては、不要電磁波が紛れ込んだとしても一過性である特徴を利用する方法が考えられます。具体的にはデジタル機器のデータ処理を、ソフトウエア上で再確認させます。前述のスラストセッティングでいえば、「98%を送ったぞ」「本当に98%か」「確かに98%だ」というやりとりをコンピューター(機器)間で行わせるのです。これはハード的な改修は最小でしょう。但し、ソフトの改修として、処理時間の遅延が惹起されます。もっとも、人間である乗員の反応時間より長くなることはありえないでしょう。乗員の関知し得ない数ミリ秒のオーダーで機体状況を変える必要はないはずです。

「電磁波を持ち込ませない」方法はとりあえずの対応策です。しかし現在のところ不完全であることは、これまでの経験で分かっています。不完全である理由は、EMIが航空機に与える危険性と、ちゃちな電子おもちゃが、一般的には結びつかないからでしょう。事実、96年に日乗連(日本乗員組合連絡会議)が指摘するまで関係当局は、携帯電話は通話中のみ、電波を発射すると思っていましたし、普通の人はファービー人形にマイコンチップが入っているとは思わないからです。

従って追加策としては「機内ではすべての電子機器の使用禁止」「具体的にはすべての電池を(危険品同様)受託扱いとする」この措置を実効性あるものとするために「罰則の法制化」を働きかける、必要も出てくるでしょう。

この問題については、討論を経て、詰める必要があると思いますので、「継続」としたいと思います。

参考:

1.デジタルバス

 航空機のデジタル機器間は、デジタルバスで結ばれています。規格として、A300-600、B747-400まではARINC429でしたが、B777からはより高速のARINC629が採用されています。どちらにも共通しているのは、シリアル転送、アドレスとデータを組み合わせたWORD構成。それぞれの特徴は以下の通り。

100kbpsとはパソコン通信でいうならば、12.5k。
ISDNは64kなので512kbps。

 具体的なWORD構成は概略以下の通り

「相手先アドレス:発信元アドレス:データ:パリティ:NULL」

2.エラーチェック

1WORDのデータを送ったときと、受けたときでの同一性を確保するために、WORDの中に確認するための情報を盛り込む方法(PROTOCOL)

 例えば「00110001」を送るならば、BITの合計は奇数になるので、データの後に奇数を意味するパリティBIT「1」を付加して「001100011」とする。データにノイズが混じり「000100011」と受け取ればパリティBITは「0」でなければならないので、このデータを「エラー」と認識する手法。

 もう少し上位の方法では、データのBIT数の合計を付加して、再現性をもたせたものもある。

3.公式報告事例

国際

  91.5 MD80 着陸 自動着陸を実施中、早すぎる着陸姿勢となり、滑走路の右半分に、大きい降下率で接地。客室内で携帯電話の使用があった。

  92.6 MD11 巡航 航法コンピューターが誤作動し、パイロットの意思に反し、降下、異常な増速を行った。コンピューターを解除できなかった。乗客使用のDATプレイヤーのスイッチをOFFにしたところ、不具合は解消された。

  93.2 DC10 着陸 最終進入体制で、自動操縦装置が機体を大きく左に傾け、危険な状態に陥った。CDプレイヤーの影響が疑われている。

  94.9 B747-400 巡航 自動操縦装置が大きく高度を振幅させ、制御不能になった。乗客使用のワープロのスイッチをOFFにしたところ、不具合は解消した。

 以後調査中

国内

  96.8 A300-600 地上停留 デジタルカメラを使用したところ、油圧装置の不作動を示す警報が表示された。

  96.9 A320 巡航 2個のエンジンに火災が発生した、との警報が表示された。その後の飛行は支障無く、原因不明。乗客使用電子機器の影響が疑われている。

  97.1 B767 巡航 超短波航法用位置表示(VOR)が誤作動。乗客の荷物内にあった携帯電話のスイッチをOFFにしたところ不具合解消。

   99.2     __ 巡航 2~3秒間対気速度計のVmin表示が上昇し、巡航速度M.82を超過。

乗客がパソコン使用。

   99.2                         巡航 VHF通信に雑音。携帯電話のスイッチをOFFにしたところ解消。

   99.3        上昇中 離陸直後オートスロットルを所望のモードに入れられず。更に29000ftにLevel offした際に、オートパイロット、FMCの異常表示。電子機器の使用を控えるよう機内放送を行ったところ、すべて正常に。ゲーム機2台の使用確認。デジカメも使用の模様。

   99.9    上昇中_機体重量表示が最大離陸重量を超える重量を示した。ノートパソコンの使用が疑われる。

   99.9                        降下中 主脚のアンロック表示が1分程度点滅。状況不明。

   99.10                     巡航中_PFD,ND,EICASDisplayが2~3秒無表示。ノートパソコン使用有り、因果関係不明。

   99.11                     上昇中_VHFに雑音。携帯電話使用有り。電話の電源をOFFにしたところ解消。

   99.12                     上昇中_オートパイロットが突然解除。デジタルビデオカメラの使用を中止した後異常なし。

   00.01                  スポット_エンジン作動中にも関わらず「エンジン停止」表示。携帯電話の使用有り。

   00.01                        降下中_FMCの画面表示が勝手にスクロール。客室内にて電子機器の使用を控えてもらったところノーマルに戻った。使用されていた機器は、ゲーム機、たまごっち、CDプレーヤー、携帯通信端末(時計型)。

4.耐空性に関わる安全水準等

 耐空性審査要領6-7-1電子装備品(臨界環境状態に対する考慮)

 FAR25.581「機体構造全般の避雷対策」

 FAR25.594「燃料系統の避雷対策」

 JISW-0812「航空機・搭載機器、環境条件および試験手順」

            搭載機器にたいし、種々の耐衝撃性などを規定しているが、EMI関連としては「無線周波数妨害感受性試験」として電界強度5ないし200V/mの耐性と、漏洩については100mV/m以下を要求している。

             5V/mの電界強度というのはとてつもなく強力な電波にさらされている状態で、簡単に言えば50KWで出力している東京タワーの直下で計測されるような強度です。

5.航空関係の経緯

 85年IEEE(国際電気標準学会)にて、微小漏洩電磁波が、電子機器に与える影響についてとりあげる。

 88年RTCA(米国航空無線技術委員会)が報告書のなかで、「航空会社は電磁波干渉の疑いのある不具合現象を報告する」との勧告を行う。

 90年頃より、電磁波干渉による航空機のシステムの誤作動例が集まり出す。

 93年4月IATA(国際航空運送協会)技術委員会が「ビデオゲーム、CDプレイヤー、ラップトップコンピューター等の電子機器の離着陸時の使用禁止」を勧告

 96年航空振興財団が影響調査を開始。

 97年運輸省航空局通達(機内における電子機器の使用)発行

 99年航空振興財団(EMI発見のための)「電磁波検出器の調査開発」報告

6.規制の現状

 一般

   欧州:電磁波を出さない、影響を受けない規制「CE」マーク

   米国:電磁波を出さない規制「FCC」マーク

   日本:電磁波を出していない業界自主規制「VCCI」1種2種

 航空

   IATA:上記記述内容の「離着陸時の使用禁止」勧告

   日本:航空会社により多少の相違があるが大意以下の通り

常時使用禁止「明らかに電波を発射する機器」

離着陸時使用禁止「IATA基準に準拠」

常時使用可能「一定の基準を満たした医療用機器、腕時計など」

具体的な機種については「常時使用禁止」機器を除き、各社で指定。

7.公的機関による不要電波放射規制

参考文献:「電磁波障害」産業図書刊 長谷川、杉浦、岡村、黒沼共著

航空振興財団「航空機内で使用する電子機器の電磁波検出器の調査開発」報告書

「エレクトロニクス ‘99/10」オーム社刊

航空技術#484「B777の技術解説」、

安全会議メモ「B777 型式証明付与を可能とする耐空性審査要領中の特別(追加)要件」(95-09-26)

 など

事故調による低酸素症の実験事故調による低酸素症の実験

事故調による低酸素症の実験 123便より短時間で切り上げたのは なぜ?? 123便事故の再調査を求める?G 事故調は、低酸素症と急減圧の影響を調べる2つの実験を行っています。果たしてこの実験で事故の状況を裏付けられたか、検証してみましょう。 試験1.被験者2名、立会い医官、操作員計4名が酸素マスクを着用して、チャンバに入り、地上から24,000ftの気圧まで8分かけて減圧。24,000ftの気圧で被験者1名が12分間酸素マスクを外し、課題作業(引き算と短文朗読)を繰り返し実施した。その後当該被験者はマスクを着用し、他の被験者がマスクを外し12分間同じ課題作業を実施し、低酸素症による知的作業遂行能力の低下を調べた。 この実験では、以下の点で事故調が推定する123便事故とは状況設定が異なっています。 ゆっくりとした減圧ほど、酸素が減っても耐えられる「試験1」での減圧率は約3,000ft/minで、事故調が推定する123便事故での減圧率の1/100に過ぎません。 しかも、123便の乗員は異常発生から墜落までのおよそ30分間操縦桿を動かし続けています。操縦桿に取り付けられたバネに抗し操縦桿を動かすには、およそ15~20kgの力が必要です。一方、実験では身体運動の負荷がない点でも事故機とは状況が異なります。 緩やかな減圧よりも急減圧の方が有効意識時間は短くなり、また身体的作業(力仕事)をすることによって酸素消費量が増加し、有効意識時間が短くなることは事故調査報告書でも述べられています。 操作能力が失われる限界とされる12分で実験終了!更に事故調の推定通りならば、123便の乗員は20,000ft以上の空気に曝されていた時間は18分以上ですが、実験は12分間で終わらせています。 このシリーズ?Fで紹介したように、日本航空発行の「EMERGENCY HANDBOOK」によれば「有効意識時間は高度2万ftで5~10分」とされています。また、運輸省航空局が監修しているAIM-JAPANには「20,000ftでは5~12分間で修正操作と回避操作を行う能力が失われてしまい、間もなく失神する」(952.【高高度の影響】)と記載されています。 事故調はなぜ、12分間で実験を打ち切ったのでしょう。 これでは「それ以上の時間をかけると顕著な意識障害が起きかねない」と恣意的な実験を行った、との疑念も生じてきます。 この実験結果を事故調は次のように分析しています。 「被験者Aは約5分後に引算課題への反応時間の増大、発話行動の異常、高調波成分の減少が生じている」 「被験者Bでは、4分頃に引算課題への誤答が目立っていること、高調波成分が一時的に減少していること、9分を過ぎて反応時間が漸増していることが見て取れる。(中略)総じて、低酸素による影響と見られる変化は、被験者Aに比べて少なかった」 そして、これらの結果から「123便に生じたとみられる程度の減圧は人間に対して直ちに嫌悪感や苦痛を与えるものではない」と結論付けています。 しかし、航空関係者が行った低酸素症の実験では、この実験とは様相が大きく異なり、短時間で顕著な低酸素症が診られました。なぜこのような違いが出たのか‥‥これについては?I号以下で紹介します。 (機長組合ニュース15-63)

19053a_ワイヤーカット申し入れニュース19053a_ワイヤーカット申し入れニュース

TEL 03-5756-3909(HND) JCA Web Site https://www.jalcrew.jp/FAX 03-5756-0226(HND) mail address contact@jalcrew.jp 05No.19-053日本航空機長組合 職場の実態から目をそむけた 調査・報告では意味がない! 電線切断を「犯罪行為」と認識し、徹底した原因究明を行い、 経営責任を明確にするよう、9月27日に経営に申し入れ 日本航空では、2000年以降3件の電線切断事例が発生しています。そして今年1月にはB767にて4件目となる電線切断事件が発生しました。 この4件目となる事件についての社内調査報告書がまとまったということで、機長組合は8月の機材品質説明会等の場で、報告書の内容について説明を求めました。 それによると、今回の事件の要因・背景には“時代の変化”によって“個人の価値観の変化”したことが関与した可能性が考えられると分析し、その対策として、「整備士として飛行機を大切に扱うことがいかに大事か」との面での教育等に取り組むとしています。 本当にそれが、平然と機材を“故意に痛めつけた”事態を招いた原因なのでしょうか? 会社は“構造改革”の名の下に、これまで様々な「合理化」を職場に押し付けてきました。整備の職場でも管理職の55歳進路選択制度を導入し、整備の現場に残れない、若しくは大幅な賃金切り下げを強いられる状況を作りました。その一方で、JALTAM、JALNAMといった子会社を設立し、委託化をどんどん進めています。しかも当該子会社の労働条件は驚くほど劣悪なもので、モラル低下も指摘されています。 こういった会社施策の影響には全く目を向けず、単に「世間」「個人」にその原因を求めるのであれば、その調査・報告は全く意味をなさないでしょう。さらに「悪質な犯罪行為」との認識を欠き、うやむやに事件を終結させ、社内の監督責任も不問にされるようでは事件の再発を食い止められるとも思えません。 機長組合は、再びこのような事態が発生しないよう、犯罪捜査も視野に入れた徹底した調査と経営責任の明確化、そして抜本的な経営施策の見直しで安心できる整備体制の確立に取り組むよう、申し入れを行いました。(裏面参照) 機長組合発、日本航空兼子CEOおよびJAL-I羽根田社長宛 発信文書 2004年9月27日 JCA 19-6 「電線切断」に関する社内調査について(申し入れ) 貴職もご認識のように、日本航空では、2000年以降、3件(2000年7月JA8913、同年8月JA8075、2001年2月JA812J)の電気配線切断事件が発生しております。また、2002年2月には、計10機の機材で、トイレ内壁に故意に開けたと思われる穴が発見されました。 これらの何れの事件においても、原因の究明が曖昧にされ、かかる事態への根本的な対策が取られないまま、更に2003年3月には、B747型機(JA8180)において、隠蔽工作と思われる機体構造部への不正な措置が行われていたことも発見されました。 そして本年1月には、重整備を行っていたB767型機(JA8234)において、電線が「人為的に切断されていた」ことが再び発見されました。 この4件目となる電線切断事件に関して、先般、社内調査報告書がまとめられ、その内容について口頭での事務的な説明を受けましたが、それによれば、報告書に記載されている「企業環境の変化が影響した可能性」というのは“個人の価値観の変化によって会社・組織の変化を生んでいることを指すもの”であって、“経営施策による働く環境の変化とは捉えていない”との事であります。

123便事故から18年目123便事故から18年目

520名の尊い人命を奪った日本航空123便 (JA8119号機)事故から17年の歳月が過ぎようとしています。 今、改めて犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心から哀悼の意を表します。 同種事故の再発防止のためには科学的な調査に基づく『真の事故原因』の究明が不可欠であり、そのために私達は以下の5項目の実現を事故直後から航空事故調査委員会に対して強く要請してきました。 急減圧が人体に及ぼす影響の公開実験 大規模な実験による破壊過程の検証と公開 未回収残骸の徹底回収と調査 フライトレコーダー、ボイスレコーダー等『生のデータ』の関係者への公開 以上を踏まえての再度の聴聞会の開催 事故調査委員会は事故原因を「圧力隔壁の破壊による急減圧」としています。しかし、私達現場の運航乗務員や客室乗務員、整備士等の航空労働者は「急減圧が存在した」とする事故調査報告書の内容には当初から疑問を呈してきました。フライトレコーダーやボイスレコーダーの解析結果、機内の写真、生存者の証言のいずれを見ても、急減圧が明らかな他の事例(1986.10.26 タイ航空機事故、1988.5.28 アロハ航空機事故、1989.2.24 ユナイテッド航空機事故等)と123便事故は際立った違いを示しています。事実、事故調査報告書の内容を検証するために1999年4月に米国で行なわれた急減圧の人体実験の結果は、事故調査報告書の内容を完全に否定するものでした。 また一昨年マスコミ各社で報道された「ボイスレコーダーの音声を録音したとされるテープ」を聞くと、事故調査報告書にあるボイスレコーダーの解析結果とは異なる会話が録音されている事も明らかになりました。しかも、国土交通省(旧運輸省)が情報公開法の施行を前に、膨大な調査資料を破棄するという再調査への動きに逆行する事実も明らかになっています。私達は、国際民間航空条約の規定に準拠して、早急に上記5項目に基づく科学的な再調査が行われるべきであると考えます。 日本航空経営の労務姿勢は123便事故を機に社会から批判を受け、経営陣は一新されました。新経営は旧来の労務姿勢を改め「絶対安全の確立」を基本とする最高経営会議方針を策定し、そのためには「労使関係の安定・融和が不可欠」との認識を内外に明らかにしました。しかし1993年以降経営は、リストラ・構造改革として「絶対安全の確立」「労使関係の安定・融和」に逆行する数々の施策を、職場の理解を得ることなく一方的に強行しています。 安全の要である整備部門では、2000年4月から導入された「整備カンパニー制度=別会社化」のもとで自社整備員の採用は年間10名程度の基幹要員のみとなり、技術の伝承や経験の蓄積も行なえない状況となっています。 更に、自社航空機の重整備を人件費の安い海外(中国、シンガポール)に委託し、自社整備主義も放棄しています。こうした状況の中で、機材トラブルによる地上引き返し、空中引き返し、フライトキャンセルが多発しています。また、昨年問題になった「故意」と思われる航空機の配線の切断事件に続き、今年はやはり「故意」と思われる航空機のラバトリー壁面の穴あけ事件も発生しており、日本航空の安全管理体制はまさに危機的な状況に瀕していると言えます。 あの未曾有の大事故から17年を経た今、私達は経営に対して、改めて事故の反省に立ち帰り「労使関係の安定・融和」を基に「絶対安全の確立」に全力を尽くすことを強く求めていきます。また、航空の職場で働く者の社会的責務として123便事故の真の事故原因を究明し、行政に対して再調査を求めて行くとともに「絶対安全の確立」のために更に活動を強化していくことを決意し、ここに表明します。 2002年8月12日 日本航空内5労組連絡会議