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706便事故調査報告書「検察官意見書」

7月16日 706便事故 第14回公判

事故調査報告書の証拠採用に関する

「検察官意見書」が公判で示される!

第2回公判(1月10日)で弁護側が示した「国際民間航空条約第13付属書5.12条の解釈と証拠採用することの問題点」に関する意見に対して、検察側は反論するとして半年以上も時間を掛けて検討した「検察官意見書」を7月16日の第14回公判で読み上げました。

弁護人は「再反論を準備する」旨発言。条約に対する後進性を示す見解であり、組合は国際的な抗議行動を呼びかけます。

《弁護側意見の要点》

・ 事故報告書を証拠請求すること自体が国際民間航空条約違反であり(相違通告もしていない)、違法である。刑事訴訟法以前の問題として証拠から排除されるべき。

・ 事故調の事故原因究明・分析と刑事裁判における事実認定とは異質であり、事故調の原因分析を刑事訴追に利用してはならない。

《検察官意見書の要点》

・ 国際民間航空条約第13付属書5.12条が刑事訴訟法の上位規程に当たるとするのは、独自の見解であり失当である。付属書は締約国を拘束するものではない(外務省経済局国際経済第二課長回答)。

・ 開示された報告書とその付録は、国の適切な司法当局の決定がなくても事故調査以外の目的に利用することを妨げない(外務省経済局国際経済第二課長回答及び同回答に添付されたICAO法律局長書簡)。

・ 事故調報告書は、学識経験者の委員がまとめたものであり、専門的知識を有する者が作成した鑑定書と同じように解される。

・ 報告書の証拠能力が肯定された事例が2件ある。(雫石事故と宮崎事故)

以下は、706裁判の第14回公判において、検察官が読み上げた「意見書」を機長組合が要約録取したものです。

(2003年7月16日)

「航空事故調査報告書」に関する証拠意見書

航空事故調査報告書に関する証拠意見を補足する。

1.平成1 5年1月1 0日付け弁護人作成の「事故調査報告書に係わる証拠意見書」に対する反論

(1) 検察官が航空事故調査報告書を証拠請求し、裁判所が証拠採用することは、国際民間航空条約第1 3付属書に違背しない。

 ・国際民間航空条約第1 3附属書5. 1 2条(組合注:以下付属書という)が、条約として我が国の刑事訴訟法の上位規範に当たるとする弁護人の主張は、独自の見解によるものであり、失当である。

   国際民間航空条約の締結国は、国際民間航空が安全に且つ整然と発達することを確保するという条約の基本的目的を達成するため、航空機等に関する規則等の統一を確保することに協力する旨を約束している。附属書は、締結国内における規則を制定する際の標準として尊重されるべき文書であって、それ自体が締結国を法的に拘束するものではない。(外務省経済局国際経済第二課長回答)

   したがって、附属書自体は、我が国を法的に拘束するものではなく、このことは、我が国が相違通告をしていないことにより、左右されないのであって、国の刑訴法の上位規範であると解することはできない。

 ・ 弁護人は、附属書の適用範囲が、事故調査報告書にも及ぶことを前提とし、裁判所による所定の比較考量判断に基づく証拠採用決定がなされなければ、事故調査報告書に証拠能力が付与されない旨主張しているが、前提を誤認するものであって、失当である。

   附属書の記述は、事故調査の最終報告書又はその付録に含められ開示されたものを、国の適切な司法当局の決定がない場合に事故等の調査以外の目的に利用されることを妨げるものではない。(外務省経済局国際経済第二課長回答及び同回答に添付されたICAO法律局長書簡)

附属書は、関係記録・情報を開示するか否かに関する「判断権限者」と「その判断要素」を規定しただけのものであって、事故調査の最終報告書又はその付録として公表・開示済みの関係記録・情報の法的取扱を制限するものではない。事故調査報告書が、公表されていることからすれば、同報告書を事故調査目的以外に利用することについて、何らの制限は存しない。

(2) 航空機事故調査における事故原因の分析と刑事裁判における事実認定との相違は、本件事故調査報告書の証拠能力を否定する理由にはならない。

 弁護人が主張する事故調査委員会による事故原因の分析の目的、分析の経過等がそのとおりであったとしても、その分析の経過及び結果が、証拠能力を付与するための定型的な信頼性を有しているのであれば、事故調査報告書の証拠能力を否定する理由にはならない。

2.事故調査報告書の法的性質、証拠能力の付与について

   本件事故調査報告書は、航空事故調査委員会設置法に基づき、運輸大臣が任命した学識経験者で構成された事故調査委員会委員長及び各委員が、同種事故の再発防止の見地から、専門分野における科学的検討により総合的結論をまとめた報告書であり、一定の専門的知識を有する者が自らの職務等に関連して作成した鑑定書と同じように解される。

   従って、本件事故調査報告書は、刑訴法321条4項書面とし、証拠能力を付与されると解される。

同種航空事故調査に関して作成された事故調査報告書の証拠能力が認められた例

?@ 雫石全日空機・自衛隊機衝突事件につき、仙台高裁昭和53年5月9日判決。 最高裁昭和58年9月22日判決。

?A 宮崎空港事件につき、福岡高裁宮崎支部昭和57年2月23日判決(上告取下)。