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日本航空機長組合 – Japan Airlines Captain Association日本航空機長組合 – Japan Airlines Captain Association

 2007年10月1日

日本乗員組合連絡会議

日本の航空事故調査は、真の事故原因を調査して同種事故の再発を防止するという点で、まだまだ不十分な現状となっています。

私たち定期航空に働くパイロットは、国際的な基準に沿って事故調査を充実させ、公正で科学的な事故調査によって将来の航空の安全に寄与できるよう、航空・鉄道事故調査委員会航空部会を以下の提言そって改善し、必要な法律の改正を行うよう求めます。 

日乗連の提言
1. 国際民間航空条約に準拠し、事故調査委員会設置法に以下の趣旨を含める

・ 事故調査の唯一の目的は将来の同種事故の再発防止であること

・ 罪や責任を課する手続きとは切り離すこと

・ 調査に関して得られた全ての資料を安全向上の目的以外に使用させないこと

・ 新しく重大な証拠が見つかった場合、あるいは事故調査報告書に誤りが認められた場合は再調査を行う

・ 再調査に必要な証拠物件は永久保存とする

・ 事故調査終了前に原則として関係者による意見聴取会を公開で行う

・ 事故調査報告書には原則として安全勧告を含める

・ 国民の安全を図るため、可能な限り迅速に調査を行う。事故調査は1年以内に終了することを原則とし、3ヶ月程度で事実報告書を公表する。1年以内に調査が終了しない場合は、1年程度で現在までの調査内容および今後の見通しを含めた中間報告書を公表する

  
2. 事故調査機関の充実を図る

・ 国土交通省から独立させ、内閣府に所属する3条機関とする

・ 事故調査機関は調査に必要な活動を支障なく行うための権限を持つ

・ 予算の充実を図る

・ 事故調査委員は事故調査に精通し、専門知識を有するものから総理大臣が任命する

・ 事故調査官は専門職とし、事故調査の専門教育を受けた上で調査活動に従事する

・ 充分な数の事故調査官を配置する

・ 調査の実施にあたり、運航実態と事故調査に精通した運航乗務員の知見を活用する

・ 運航会社、メーカーなどの利害関係者の参画は技術的な情報提供にとどめる

・ 死亡事故の調査にあたっては、事故調査の知識のある機関により、原因調査の観点から検視を行う

・ 安全勧告の実施状況を追跡調査する部署を設置し、強い勧告権限を持たせる

・ 事故調査機関の科学性と公正さを保持するために、事故調査機関は国民に対して常に門戸を開き、安全に対する啓蒙活動を行う

 
3. 活動内容(所管項目)の整備

・ 事故被害者や遺族の心理的ストレスの緩和に関する業務を行う

・ 予断に基づいた報道がなされないよう、専門広報担当官を配置し、一元的に正確な情報を責任を持って提供する

 
4. 捜査機関との職務の分担を明確にする

・ 現在事故調査委員会と警察庁との間で結ばれている「覚書」および「細目」を撤廃し、改めて事故調査を優先させる法制度の制定、ないしは新たな取り決めを行う

・ 事故発生時に効果的に初期対応が実施できるよう、警察、消防、赤十字その他の機関による災害救助や被害発生防止活動が速やかに行われること、および警察等の機関が、事故調査機関の指揮・監督のもとで、事故調査に必要な現場保存や資料の収集活動にあたることができるよう、法制度の整備を行う

・ 全ての証拠物件は事故調査機関が管理する

・ 事故調査の過程で、事故の発生を意図して行われた行為、ないしはそれに準じる行為と事故調査委員会が認めた場合、警察と協議を行う

 
提言の背景
私たちの社会の中では、毎日のように交通機関の事故、原子力発電所など産業システムの事故、建築物あるいはその設備の事故など痛ましい経験をしています。そして事故の大小を問わず、生命を奪われる、負傷するなど人的な被害が生まれ、犠牲者の遺族は深い悲しみの中に突き落とされます。

私たちが携わる航空産業においても、1985年の日航機御巣鷹山事故では520名の人命を失う大事故を経験しました。そして不幸なことに、その後も事故や重大なインシデントは毎年、起きています。航空界においては、“事故の再発を防止するためには公正で科学的な事故調査が極めて重要”であると早くから認識され、永年にわたって改善のために取り組みが行なわれてきました。

航空の安全を守る上でのバイブルとされるのが、国際民間航空条約です。それは時代の最新かつ高度な技術が凝縮された航空機の発展とともに歩む中で、航空の先進国とされる欧米を初めとして世界各国の乗員や航空関係者が学び築きあげた英知と言えます。その第13付属書では、「事故またはインシデント調査の基本目的は、将来の事故またはインシデントの防止である。罪や責任を課するのが調査活動の目的ではない」と高らかに謳われています。

日本においては1974年1月11日、航空事故調査委員会が運輸省に設置され、航空・鉄道事故調査委員会に改組されました。常設の事故調査機関の存在は、本来、大いに評価されるべきものです。しかし現実には、現在の事故調査委員会の活動は、事故原因の追究や再発防止といった社会の要請に十分に応えたものとはなっておらず、社会から大きな疑問や不満があがっています。

1997年6月、JAL706便が三重県志摩半島上空で大揺れし、負傷者が発生した事故では、事故の再発防止が唯一の目的である事故調査報告書を基に機長が起訴され、現役の事故調査委員が証人として証言しました。これは、事故調査を責任追及とは切り離すべきであると謳った国際民間航空条約に反するばかりか、その判決において事故調査報告書の内容そのものの誤りが指摘され、無罪が言い渡される結果となっています。続いて2001年駿河湾沖で発生した日本航空機のニアミス事故でも、捜査段階における取調べにおいて事故調査報告書が関係者の刑事責任の材料として使われています。

このような事故調査と警察の捜査の現状は、真の事故原因を調査する上で大きな障害となっており、世界の航空関係者から航空安全への悪影響が懸念されています。

1. 国際民間航空条約の遵守

1944年、世界の民間航空を安全かつ効率的に運用するために、52カ国の代表によりシカゴ条約が締結されました。以来60年以上にわたり、国際民間航空条約(ICAO条約)は航空界のバイブルとして、安全の向上にも大きな役割を果たしてきました。

航空事故の調査についてはICAO条約の第13付属書に規定されており、日本も同条約を批准していますが、日本の事故調査は世界標準に沿っているとは言いがたい現状です。日本の事故調査をICAO条約に沿った形で行えるよう、ICAO条約に準じて国内法を整備する必要があります。

 
2.事故調査機関の充実

  日本の航空・鉄道事故調査委員会は、現在は国土交通省内に設置されて
いますが、米国のNTSBや欧州各国の事故調査機関と比較した場合、
その体制や予算規模における脆弱さは明らかです。米国のNTSBの年間予算は
約90億円程度で、これは国民一人当たりにすると30円程になり、
カナダの事故調査委員会の場合は90円程度です。一方、日本の場合は
一人当たり1円にも満たない現状です。
事故調査は「熟練者によってのみ行われるべき、高度に専門的な作業」とされ、
調査官の熱意と忍耐力が調査の質を決めるといわれています。また、
不適切な事故調査は、何も調査を行わないよりももっと弊害が大きいとも
言われています。
公正で科学的な事故調査を実現し、公共交通機関としての航空の安全を
向上させるためには、他の行政機関の影響を受けにくい独立した機関とし、
十分な予算と人員配置に裏付けられた機関とする必要があります。
 
3.活動内容の整備

ひとたび航空事故が発生すると、多くの場合重大な結果をもたらします。そのため、センセーショナルな報道がなされ、拙速な事故原因の推定や安易な責任追及などの報道が先行することにより、社会に誤った認識が形成されることが少なくありません。こうした報道の背景には、事故に関する情報が不適切に取り扱われている問題があります。公正・中立な事故調査を行うには、事故調査機関の広報担当者による責任ある情報管理が極めて大切です。

また、被害者・遺族は、心理的に非常に厳しい状況に置かれますが、心のケアは置き去りにされているのが実情です。米国のNTSBやオランダの被害者救援組織などが、事故直後から積極的に被害者・遺族の心理的なストレスの緩和にあたっていることを見たとき、日本は後進国と言わざるを得ない状況です。
 
4.捜査機関との職務の分担

日本における航空事故調査は、警察庁と事故調査委員会との間に交わされた覚書により、警察の犯罪捜査が優先され、事故調査委員会は警察に鑑定機関として協力するよう取り決められています。国際民間航空条約にも謳われているとおり、事故調査は関係者の責任追及とは切り離して行われなければ、真相を究明することは困難になります。

こうした日本の現状を改めるには、捜査と調査を分離するよう「覚書」を見直すことが急務です。

ヒューマンエラーは、事故原因を構成する要因の主要なもののひとつとされ、同時に人間はいかに訓練を充実したり罰則を強化したりしても、ある確率でエラーを起こすことは避けられないというのが、専門家の一致した認識です。当事者の行動が犯罪を意図したものでない場合は、刑事責任の対象から外し、公正な事故調査によって事故の再発防止を図ることが、社会の要請に応えるものと考えます。

一方、もし事故の発生を意図して行われた行為や、薬物・アルコールの服用など、これに準じる犯罪性が疑われる場合については、他の犯罪同様に扱われることを否定するものではありません。

 
最後に
   
ここ数年の社会の変化を見逃してはなりません。

航空事故だけでなく、JR西日本の福知山線事故や六本木ヒルズの回転ドア事故、東武鉄道踏切事故、そして706便事故と同時期に検察によって徹底的に立件され医療刑事裁判となった様々な医療事故を経験した社会は、やっと気がつきはじめたのです。明治時代に制定されて以来殆ど形をかえていない刑法という法律で当事者(個人)を裁こうとしても、真の事故原因は追究されず、また企業やシステムなど本来の社会的責任の追及にもならず、再発防止にはつながらないことを。

私達、日本乗員組合連絡会議は、被害者・遺族の救済にも目を向けた、あるべき航空事故調査を実現するために、枠組みにとらわれることなく利用者・国民、航空関係者とともに全力で取り組み、関係行政機関や立法府に働きかけていきます。

そして、さまざまな分野で同じ問題に取り組む組織・団体に広く連携を呼び掛けます。

目的は唯一、“安全な社会を目指して”

以上

123便事故の調査を求める1123便事故の調査を求める1

「急減圧はなかった」となれば、崩壊する 事故調査報告書のストーリー 123便事故の再調査を求める?@ 123便事故調査報告書(87年6月19日発表)では、その推定原因を「修理ミスが原因で、飛行中に後部圧力隔壁が客室与圧に耐えられなくなって破壊し、客室内与圧空気の圧力によって尾部胴体、垂直尾翼が破壊され、油圧系統も破壊され操縦不能となり墜落した」としています。 この「垂直尾翼の破壊エネルギーは、圧力隔壁から流出した機内からの空気流である」とのストーリーは、機内の急減圧の発生なしには成り立ちません。 しかし、コックピットでの会話、機内の写真、生存者の証言など、急減圧の存在を否定する事実が次々と明らかになっています。これは事故調査報告書の推定原因を根底から覆すものに他なりません。 このシリーズで、事故調査報告書における疑問・矛盾を振り返り、真の事故原因究明のために、再調査の必要性を考えていきます。 検察官も否定した事故調の推定原因 この事故の刑事責任を調査していた検事が、8.12連絡会の遺族に対し次のように語っています。 事故調査委員会の報告書もあいまいと思う。皆さんは我々が本当に大切な資料を持っているように思っているが、資料は、事故原因については事故調査委員会の報告書しかわからない。それを見ても真の原因はわからない。 修理ミスが事故の原因かどうか相当疑わしいということだ。タイ航空機の時には、乗客の耳がキーンとしたという声があったが、この事故ではない。圧力隔壁破壊がいっぺんに起こったかも疑問である。 まずボーイング社が修理ミスを認めたがこの方が簡単だからだ。落ちた飛行機の原因ならいいが、他の飛行機までに及ぶ他の原因となると、全世界のシェアを占めている飛行機の売れ行きも悪くなり、ボーイング社としては打撃を受けるからだ。 犯罪捜査の立場から綿密な調査活動を進めてきた担当検事からも、事故調の報告書が信頼されていないことは、注目されるところです。 事故調が隠ぺい工作?! 担当検事の弁にもあるように、原因調査には事故調査報告書だけでは全く不十分であり、残骸・CVR・DFDRなど関連資料の関係者への公開は、欠かせません。 私たちは事故調査委員会に対し、こうしたローデータの公開と再調査を求め、度重なる要請を行ってきました。また123便事故の遺族も、昨年1月、運輸省宛てに事故原因の再調査を求める要請を行っています。 こうした中で、事故調査委員会は、昨年11月に1.6トンもの事故調査関連資料を破棄したとも報道されています。 報道が事実ならば、再調査を求める声が高まる中、事故調はなぜ処分しなければならなかったのでしょうか? 「来年の情報公開法施行を意識して」(関係者間の連絡文書)の処分ならば、その資料公開をなぜ恐れたのでしょうか? またこれが妥当な取り扱いであるならば、なぜ事故調は今年5月の安全会議との交渉の席上、「処分していない」と虚偽の説明をしなければならなかったのでしょうか? (機長組合ニュース 15-17) 目次に戻る

用語解説用語解説

Auto‐pilot :自動操縦装置。 auto-throttle :自動操縦装置の機能の一部で、自動的にエンジンの推力調整レバーを動かす装置。 コントロールコラム : 操縦桿 DFDR:フライトレコーダー ディスコネクト・ディスエンゲージ :disconnect・disengage. はずれる、オフになる。 ECRM :エレベーター・コマンド・レスポンス・モニターのことで、自動操縦装置が出す操縦信号どおりに昇降舵が動いているかどうかを監視する機能。その信号と舵との間に所定の差がある時間以上生じると、自動操縦装置切り離す機能もある。(詳細はこちら) Fly-by-Light :Fly-by-Wireと同様のシステムであるが、電気配線の変わりに光ケーブルにより、信号を伝える方式。 Fly-by-Wire :これまでの飛行機は、操縦桿から舵面を動かす装置(アクチュエーター)まではケーブルでつながれていたが、操縦桿の動きを直接アクチュエーターに伝えず、一度電気信号に変えて自動操縦装置に伝え、必要な電気的処理を行った上で、再び電気信号としてアクチュエーターに伝える操縦系統の呼称。多くの最新鋭軍用機や一部のハイテク旅客機で採用されている。(MD11は、従来のケーブル方式とFly-by-Wireの中間的機材) Flight Control、 Flight Control System:昇降舵(エレベーター)、エルロン、ラダー、スピードブレーキ・スポイラー、フラップ、トリムなど、飛行機の操縦装置全般のシステム。(三面図へ) flight director :飛行指示装置のことで、手動操縦時に、いろいろな飛行状態の下で最適な機首角度と左右の傾きの指示を、姿勢指示器の中に表示する装置。 G :重力のこと。2G とは、重量の2倍の重力。自動車に乗っていて急ブレーキをかけると体が前に投げ出されるが、2G の重力がかかったといえば、体重の2倍の重力が前方にかかったことになる。 glide slope :計器着陸において、決められた進入角度(通常は3度)からの上下のずれを示す装置で、滑走路わきに置かれたアンテナから発射された電波を受けて、操縦室内の計器に表示する。この信号を使うことで、自動操縦装置による自動着陸も可能となる。

機付き整備士廃止批判機付き整備士廃止批判

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