(5)CREW INCAPACITATION(乗員の機能喪失)

 パイロットの身体検査基準は一般に比べ.かなり厳しいものとなっています。しかし.それでも飛行中にパイロットがINCAPACITATIONに落ち入る可能性がないとはいえません。
 過去の事例をみると,飛行中のパイロットのINCAPACITATIONは,年齢に関係なく、あらゆる飛行の段階で起きています。

INCAPACITATIONの形態も.他の乗員が見て,全く気付かないまま機能喪失に落ち入っているもの(SUBTLE INCAPACITATION)や.一見して異常とわかるもの(OBVIOUSINCAPACITATION)とがあり,その程度も,一時的なものから死に至るものまで多種多様です。
 たとえば飛行中の食事による食中毒もINCAPACITATIONであり.過去にそういう事件も報告されています。

 場合によっては.パイロットが異常なのか,どうかについて他の乗員同志が協議を必要とする場合もあります。
 フライトセーフティー誌に紹介された事例では,飛行中機長がおかしな言動をする為. 副操縦士と航空機関士が慎重に協議した結果,会社に報告しました。
 その機長は精密検査をうけた結果,脳腫瘍に犯されていることが分かりました。
  この事例は,3名編成だからこそ重大な事態に至る前に対処できたといえます。

 突然パイロットが心臓発作などにおそわれた時などは.安全な飛行を他のパイロットが引き継ぐのと同時に,当該パイロットの命を救う為に,直ちに介護しなければなりません。
 3名編成で航空機関士が乗務していれば.いかなる飛行の段階においても対処可能ですが,2名編成機で,離陸直後や.着陸間際に同じような状況が起きたら,CABIN CREWの手助けを得られるようになるまでにはかなりの時間が緯過していることでしょう。し かもCABIN CREWは呼ばなければ釆てくれませんし.CARGO機ではそれすらでさません。

 3名の乗員が2名になるのと,2名の乗員が1名になってしまうのとは大変な差です。パイロットのINCAPACITATIONは重大な結果を招きかねません。機能喪失に落ち入った乗員の発見と.一刻も早い乗員の手当て,そしてその後のフライトを安全に完遂する為にも航空機関士の存在が重要です。