〔7〕航空法第65条改訂
1985年(S60年)8月12日,JL123便の事故により,乗員乗客520名の犠牲者が出るという大惨事が起きました。
JL123便に乗務した航空機関士は,その後の事故調査において,客室との連絡,当該機に起った状況の把握,緊急操作に対する協議やアドバイス,それに伴うチェックリストの運用,会社との無線連絡や管制官との通信も一部パイロットに代って行い,そして最後には懸命に操縦を続けるパイロットへの必死の励まし等,極限の状況下において実に素晴しい活躍をした事は報道において国民の前に明らかになっております。
この事故の後,中曽根首相は「航空の安全は国民的課題である」と言明していたにもかかわらず,それから3ケ月も経たぬ11月12日には,航空機関士の搭乗を義務付けている航空法第65条の改悪案を国会に提出したのでした。
それまで日本では,航空法第65条により以下の航空機に航空機関士の塔乗を義務付けていました。
1.4基以上の発動機を有し,且つ,35,000kg以上の最大離陸重量を有する航空機
2.構造上,操縦者(航空機の操縦に従事する者)だけでは発動機及び機体の完全な取扱いができない航空機
しかし,今回の航空法第65条の改訂とは上記2項のうち第1項を削除しようというものだったのです。
この航空法第65条の改悪案は,貿易摩擦解消の為の市場開放,民間活力の推進などを理由にした「規制緩和一括法案」のなかに含まれていました。
「規制緩和一括法案」とは,実に8省26法律42項目にも及ぶ種々の規制の緩和について,一度にまとめて審議し,その賛否を問うという不当なものだったのです。
通常ならば航空法の改訂に当っては,運輸委員会で審議されるべさものですが,今回の改訂に当っては何ら技術的専門的な審議が行われることなく,衆議院に上程されてから参議院で可決成立するまでわずか1ケ月という異例のスピードで進み,1985年(S60年)12月13日,航空法第65条の改訂は可決成立していました。
航空法第65条の改悪案が報道されて以来,日航乗組は日乗連,航空連とともに国会への精力的な取り組みを行いました。日乗連を中心に進められた個人署名では、2,653部、航空連が行った団体署名では89団体の,「航空法第65条改訂反対」の署名が航空局に提出されました。又,運輸大臣に対して「航空法第65条改訂中止の申し入れ」を行い,航空連とともに各政党委員に「取り組み要請文」を送付し,説明を行い,国会審議へも廷ベ11回,38名が参加し傍聴を行いました。
その結盟,国会において,航空法第65条改訂に対しては「一括審議」からはずす様に要請するという修正案が発議されました。残念ながら,この修正案は否決されましたが,航空法第65条の改悪に歯止めの意味を持つ附帯決議が,第65条の改訂と合わせて決議されるに至りました。
この附帯決議とは法的効力はないものの,立法者の主旨を表わすものであり,司法の判断において大きな影響力を持つものです。
| 許可.認可等民間活力に係る規制の整理及び合理化に関する法律案に対する附帯決議 政府は,次の事項について,検討の上,善処すべきである。 1.地代家賃統制令の廃止にあたっては,その対象土地家屋の借地・借家人に与える社会的・経済的影響を考慮し,公共住宅への入居あっせん等を含め,借地・借家人の生活の激変緩和に努めるとともに,周辺の地代・家賃に影響が及ばないよう配慮すること。 1.自己認証制の適用品目の選定にあたっては,国民生活の安全佐確保に十分配慮するとともに,その運用にあたっては,安全基準,技術基準等に対する適合状況,事業者の品質管理能力や検査能力を的確に把握して,災害の発生を防止し,国民の生命及び身体の安全に対して危害が及ぶことのないよう万全を期すること。 1.都市開発等の規制緩和にあたっては,都市開発の促進,宅地開発の円滑化等を図る一方で,地方自治体の自主性を尊重するとともに,良好な居住環境を確保するよう十分配慮すること。 1.運輸関係の規制緩和にあたっては 今後とも安全の確保に努めるとともに.過当競争による輸送秩序の混乱や労働環境の悪化を来さないよう配慮すること。とくに航空機関士を乗り組ませなければならない航空の範囲についての規制緩和にあたっては、航空の安全性を確保するよう十分留意すること。 1.民間活力の促進と行政の簡素・効率化を図るため,許認可等を定期的に見直すとともに,税制緩和措置の有効性の確保を図るなど,引き続きその整理合理化を検討すること。 1.経済摩擦問題の解消と自由貿易の促進を図るため,輸入検査手続きの一層の改善等の措置を横ずること。 右決議する。 |
航空法第65条の改訂は表向きには英国製4発JET機BAe146を我国が購入できるよう条件を整える為とされていましたが,実際に当該機を購入予定している航空会社等のたいことや,昨今の航空界の動向を見るに,B747−400の2名編成導入が目的である事は疑う念地のないものです。