〔5〕大統領特別委員会(PTF)報告の問題点
大統領特別委員会はその結論を
「DC−9−80を2人の乗務員で運航することは安全である。安全のために第3の乗員を加えるという理由は立証されなかった」
と,DC−9−80の2名編成を認め,又B767等に対し,
「設計通りB757,B767そしてA310は2名編成で安全に運航することは可能である。安全のために第3の乗員を加えるという理由は立証されなかった」
としていますが,これらの結論と同時に「乗員編成の承認に関する勧告」として5項目、「安全に関する勧告」では実に13項目にものぼる現在の問題解決の必要を述べています。
(勧告17頁参照)
大統領特別委員会の結論が出されると,世界の乗員〔IFALPA(INTERNATIONAL
FEDERATION OF AIRLINE PILOTS ASSOCIATION),FEIA(FLIGHT
ENGINEERS・INTERNATIONAL ASSOCIATION),EURO PILOT,EFEO(EUROPEAN FLIGHT
ENGINEERS' ORGANIZATION),日東連.ALPA−J(AIRLINE PILOTS ASSOCIATION OF JAPAN)等〕から以下のような反論及び見解が出されました。それらを要約すると
しかし,大統領特別委員会は,わずか120日間という短い期間と,エアラインの緯験を持たない3名の委員による結論を残し,それに対する反論について議論することもなく解散してしまいました。この大統領特別委員会の結論が,メーカーにとってB757.B767の2名編成を確定的なものとしました。更にメーカーは,当時議論の対象ではなかったB747−400やMD−11等の大型機に対しても大統領特別委員会の結論を2名編成の足がかりにしようとしているのです。
アメリカ航空会社のターボジェット旅客機の事故の概要(1971−1980)
| 2人編成(注a) | 3人編成(注b) | |
| 100万回出発あたりの全事故率 | 2.86 | 6.28 |
| 100万回出発あたりの乗務員に起因する事故率 | 1.46 | 1.73 |
| 100万時間あたりの全事故率 | 3.09 | 3.47 |
| 100万時間あたりの乗務員に起因する事故率(注C) | 1.58 | 0.96 |
注a)B737,DC-9,BAC-111
注b)DC-8,DC-111,L1011,B720,B707,B727,B737,B747
注c)NTSBの乗務員に起因している原因/要因という資料を使用
注d)B747のタービュレンスによる傷害を含む
上の表は,大統領特別委員会が使用した事故率のデータですが,(注d)にある通りタービュレンスによる傷害まで3人編成に含まれています。
下の表は,IFALPAが1977〜'78年のFAAのデータを詳細に分析した結果です。タービュレンスやメカニカルトラブルなど編成に無関係と思われるものを除外し,乗員に起因するものだけを比較すると,3人編成の100方向出発当りの事故率の方がずっと低いことがわかります。
1967ー76年の10年間に渡る米国の202の事故について、3名編成と2名編成とに分け、乗員に起因した事故を比較した表

(大統領特別委員会勧告)
一乗務員編成の承認に関する勧告一
我々は,DC−9−80を最少2人の乗務員で運航することに村し.FAAが踏んだ手続き
は適正なものであり,その時の最高の技術水準を示すものであると結論を下したが.これらの手続きは将来の証明に備え,いくつかの点において改善かつ強化されるべきであると勧告するものである。
1.デジタル電子機器及び飛行操縦システムの急速な発達,並びにこれに付随するコンピューターのソフトウェアーの複雑さが増したために,航空機の証明を行う場合,FAAは、これらの分野について適切に言及できる巾が広く底の深い専門知識を有することが要求されている。FAAはこれらの目的のためにそのスタッフに適切な人員補充を行うべきである。更に,FAAは,そのような新しいシステムが,運航乗務員に与える影響について評価を下し,ソフトウェアーに証明を行い.ソフトウェアーの内容形態が変更されることを監視することについて特別な手続きを設定することを勧告する。
2.現在.ワークロードを評価することに対し.一般的に認められている唯一の方法は,従前の航空機のデザインを比較することに基礎を置いたtask/time−1ine
analysis(飛行の時間に沿って仕事を分析)の方法である。この方法は適切な資格あるパイロットが適用した主観的な評価の方法を改善することにより補強すれば,FAAの乗務員編成基準と一致している事を証明する最も良い方法となるであろう。我々は,FAAがB757並びにB767型機の証明を行う場合に,このような方法をテストの中に採用することを勧告するものである。
変化する状況下における乗務員の能力を研究することは,将来において.乗員編成を評価するための新らしい方法を産みだすことになるであろう。これらの研究を行う場合ラインの選はれたパイロットを登用し,ラインの運航(Full−mission)のシミュレーションを実施することは可能である。
3.適切な資格のあるラインのパイロットと協議することは有益であると長い間証明されて来ており,航空機をデザインする過程で航空機メーカ←により,様々な範囲で貝体化してる。新らしい航空機を証明する場合のいくつかの点,例えば乗員のプロシージャー.ワークロードの評価、訓練要求項目などは適切な資格あるラインのパイロットがおそらく,ある特定の期間,FAAで働らくことになるが,FAAの証明チームと論議することにより, 内容を高められたであろう。
我々は.FAAがDesignated Engineering Representatives(DERs)を使用するという現行の手続に沿った形でこのような手続を採用することを勧告するものである。 注)DER/メーカーに所属しながらFAAの代行として,検査業務を行う人。
4.FAAは気象,ATC,その他のシステムが及ばす影響を評価する公式な指導要綱を提供するために,現行のFAA命令8110.8 の第187章を完遂,維持することを最優先すべきである。
5.Minimum EquipmentList(MEL)とは,航空機が事業運航に供する場合(適切な運航制限を設けて),使用不可能でも良い事項のことである。乗務員のワークロードはMELにより直接的に影響を受けるためになることを考慮し,我々は乗務員編成に係る証明手順,並びに航空会社の運航仕様を決定する段階の次の過程において,MELは備準されるべきであると勧告するものである。
−その他安全に関する勧告一
乗員編成は,前に述べた様に航空の安全に関係する多くの乗務員が関与する問題のうちの1つの事柄である。運航乗務や他の者が訴えた問題並びに我々自身の観察の結果を某礎に、我々は次の事項が航空の安全を高めるために重要であると考える。
1.航空機の安全間隔設定プログラムはFAAの最優先事項とすべきであり,又.ATCシステムを改善する努力が適切かつ早急に払われるべきである。我々は最近,FAAが衝突防止システムを早急に実施するというプランを発表したことに勇気づけられるものであるいALPAや他の者が主張していたように,我々はFAAに.これらのシステムの初期実施段階においてはATC Radar
Beacon System(ATCRBS)を使用する可能性を検査することを勧告するものである。すべての非常に幅捧する空域や主要夕ーミナル空域において,出来得る限り早い時期に航空機は全面的に管制されるべきである。
低性能機とジェット旅客機との適切なセパレーションを設定するために,主要なターミナル空域において緩衡空港や滑走路(Relieverairportsandrunways)を設置すべきである。
2.ATCシステムの効果を高めるために,我々はFAAが非常に拒摸する空域を飛行する
すべての航空機は少なくともMODE C(高度を表示する)トランスボンダーを装備することを義務付けることを勧告するものである。
3.Visual Approach Slope−Indicators(VASIS)のような垂由方向の誘導目安となる様なものを,航空会社が使用するすべての滑走路に設置すべきである。又.航空会社が運航する空港にはILSが設置されているべきである。ILSや関連する地上支援施設は,自動着陸のような航空機の性能の進歩に対応すべく,性能の向上が計らなければならない。
4.空港ごとの騒音軽減飛行方式は,場合によっては,安全を危くする特別な飛行操作を要求する。我々はFAAが,その第1義の関心事として,安全に関わるこれらの操作に関し,プロシージャーを標準化する方法を検討することを勧告するものである。又古いいタイプの航空機のために考えられたこれらの騒音軽減方式は,新らしく低騒音の航空機に適用しないことを考えるべきである。
5.飛行前の気象ブリーフイング並びにタイムリーで正確な飛行中の特にターミナル空域における気象情報を提供することに関し,改善がなされるべきである。
6.航空機の大きさに拘らず,運航乗務員は,航空機を飛行させることに関係しない要求や注意散慢から解放,隔離されるべきである。飛行のクリティカルな段階における飛行に関係ない会話や通信を禁止するというような方法が提案されてきた。パイロットが注意散慢となる可能性は,Single
Transponder Code Assignmentsや自動通信装置の使用を増加させ,乗客の個人的な要求のような間遠に対処するための地上と客室乗務員との直接通信回路を設定することなどを通じ,更に滅少させることが出来る。
我々は又,客室乗務員とコックピットとの不必要な接触を更に減らすことを勧告するものである。客室乗務員は,運航乗務員の援助なしに,乗客の問題を処理し,客室の装置機器を操作するよう訓練されるべきである。
7.運航乗務員の機能喪失はめったに起るものではないが,航空会社は同じ乗務員の突然の機能喪失を知り.そのような緊急事悪において由ちに適切なプロシージャーを取れるよう乗務員を訓練する統一したプログラムを確立すべきである。
我々は又,クリティカルな段階の飛行において.機能喪失した乗務員が操縦系統を邪魔しない制御装置を開発し,使用することを勧告するものである。
8.航空会社が,乗務員が関係する事故の数を減らすために指揮.命令,統卒力,コックピットにおける人間やシステムの能力を引き出し管理する方法などについての訓練を改善したり,Line
Oriented Flight Training(LOFT:実際のラインの運航を指向した飛行訓練)のプログラムを確立したりしている努力は印象的である。
我々は,加えて.副操縦士として業務を行うラインのパイロットも同様にその者が従やする航空機のタイプ限定を付記したFAAの定期輸送用操縦士免許(日本のATR)を所有することを要求されるべきであると勧告するものである。
9.安全規則を実施する場合に,FAAが不当にも懲罰をもってこれを行おうとしているように思えると,何人かのパイロットが問題提起したことに対し.特別な配慮が払われるべきである。我々はFAAと運航乗務員の問に,信粕と脇力の念を痩透し,強化する方法を捜し出すべきであると勧告するものである。特に,NASAのAviation Safety Reporting System(ASRS:航空機のインシデントをNASAに報告するシステム)は,FAA及びNASAにより強化されるべきであり,ASRSに該当する免責規定を強化することに対し又,コックピット・ボイス・レコーダーに記録された会話が不当に公開されることから乗務員を保護することに対し,充分な考慮が払われるべきであることを勧告するものである。
10.運航乗務員の責任に関するFederal Aviation Regulations(FARs)の多くは不必要に複雑であるように見うけられる。
このFARを簡潔明瞭にして,より判かりやすく,使用しやすいようにする努力が払われるべきである。
11.航空路,ターミナル空域,及びアプローチ,チャートはしばしば使いにくい仕様でデザインされていることがある。これらのチャートのデザイン,内容は改善されるべきである
12.運輸長官は,FAA及び一般的航空産業が意志決定するために必要な安全に関する情報を集め,情報処理し,分布するというFAAの能力を高めるためにFAAのプログラムAviation
Safety Analysis System Project(航空安全分析システム計画)の実施を早める措置をこうずるべきである。
航空安全分析システムは,NTSBやICAOによって維持管理されているデータシス
テムを含むFAA以外の事故のデータシステムと一致するようデザインされているものである。
このシステムは全世界のデータを包含することが必要である。
13.運航乗務員の任務に対する自動化の影響に関し,FAA.NASA及び凶防省で実施している研究は,継続,拡大されるべきである。我々は又航空交通情報のコックピッ内表示,Head−UP Displaysなどの安全に関係するシステムの開発.評価並びに現在行われている疲労,生活リズムの変化,勤務時間の良さなどが運航乗務員に与える影響の研究に対し.強力に支援を行うよう勧告するものである。