11.13 新人事賃金制度に関する執行委員会方針

   

 2010年11月15 日本航空機長組合

 裁判所による更生計画の認可には、債権放棄に応じていただく債権者の方々の更生計画に対する賛同が最低限必要とされている。その投票締切日を11月19日に控える中、新人事賃金制度について労使で協議を重ねてきた。その中で、賃金システム改修が制度実施日に間に合わないなど、不十分な点は残るものの、懸案事項につき、会社と最低限の方向性は確認できたと判断する。また、健全な労使関係の下、速やかに更生計画の認可を受けスタートラインに立つことが、今後、JAL再生の過程において非常に重要な意味を持ち、かつ全社員共通の利益につながると機長組合は確信している。これを踏まえ、以下方針を決定する。(機関決定は次回臨時組合大会にて行います。)

更生計画の認可に向け、機長組合は、次の2点を確認し、苦渋の決断ではあるが、新人事賃金制度に合意する。

・制度実施に当たっては、公平性の観点をもって、運航乗務員の実態に即した運用となるよう労使で真摯に協議を継続する。

・水準については、当面の取り組みとして業績の回復が現実となった際に、再生協力一時金等での社員への還元を求めていく。また、長期的な取り組みとして、年収水準の向上を目指していく。

 機長組合は、今回の人事賃金制度改定にあたり、4月21日付文書「新人事賃金制度について」の会社提案を受け、半年以上の間、精力的に労使交渉を重ねてきた。その中では、最終的な決定事項であり、一切意見は聞かない、という旧来のJAL労務部に見られたような頑なな姿勢はなく、会社側に「変化」が感じられた。すなわち、労使双方に主張をし、お互いに持ち帰り検討し、受け入れられる点、受け入れられない点を合理的に整理し、根拠をもって明らかにしたうえでお互いの折り合いの付く点を探り、再度修正案を提示し話し合う、という形で交渉を進めてきた経緯がある。


本来は、労使協議を通じ、あらゆる制度上の不備を解消し、労働条件の変更等、すべてに納得が得られた後に、合意をするということが重要であることは論を待たない。しかし一方で、制度の面では、大幅な変更であるが故に、現場で発生するあらゆる状況を想定し、あらかじめ対応策をすべて制度に盛り込むことは不可能であるという現実もある。今後は運用段階で実態に即して公平性が保たれているかを検証し、運用を工夫し、必要があれば変更を加えていくことが、より良い制度とする上で有効である段階に来ていると判断する。

また、重要な労働条件である賃金の水準についても前例のないほどの大きな切り下げであり、働く者としては到底納得できないものではある。しかしながら、JALが破たんし、会社更生法が適用されるという現実の下、更生会社という枠組みの中で再生を果たしていくためには、現時点ではこれを受忍し、出発点と意識して、今後、短期的には業績に応じた再生協力一時金等で、水準の向上を目指していくことに展望を見出さざるを得ないと判断する。

これまでの交渉過程で、言葉だけではなく労使で真摯に話し合う関係ができつつあることは評価できる。また、今後制度を運用していく段階で現場の声を重視し、不具合のある点、制度上の不備については労使協議の上、改善していき、再生への足取りが確かなものとなった際には社員への還元を検討していく、という会社姿勢も確認できた。

以上の点を踏まえ、11月19日の債権者投票、11月末の更生計画認可を控え
た今、この判断を行うことが、全社員の望むところであるJAL再生に向けての力強い第一歩となることを確信し、新人事賃金制度に合意する。

 以下、現時点での懸案事項の到達点を整理する。

>> LOLについ

新制度については、会社負担を極小化した上で継続する。給付の開始時期、水準については新人事賃金制度に応じたものに組み替え、PEライセンスが切れてしまっても、給付の空白期間、大幅な収入減がないよう調整する方向で検討中。給付期間については、原資との関係もあり短縮とならざるを得ない方向だが、掛け金の額にもよるので継続協議とする。現行制度下における受給者については、保険会社からの見解でもある、「すでに退職された方については個々の同意が得られない限り制度変更は難しいし、現実的ではない」という認識で労使ともに一致している。

LOL制度について、会社は、「原則こうした制度は、今回の賃金制度改定で廃止になる方向であったが、皆さまの現場の拘りもあり、会社としても工夫することで残すことが出来ると判断した。」「現下の状況を前提に会社拠出割合は極小化した形としているが、今後の状況が変化した際には見直しもあり得るだろう。」と、発言した。

>>地上業務中の基本給評価部分について

一時的にPEライセンスが失効している中で180日を超える場合、専らSIM業務や地上業務に就く場合の、基本給部分の評価(1,2,3)について、機長組合は、少なくとも運用上、標準(2)の評価が採り得る制度とするべきである、と主張した。

機長組合は、併せて病欠時(SIK)の際に、1日当たり標準報酬月額の日割りの2/3しか払われないことから、被る不利益が、1日当たり機長で約2万円となり、大きすぎることも指摘した。また別要因ではあるが整理解雇の人選基準案に身体検査上の基準が入っていることも合わせると、乗務に就きうる状態の確認という運航乗務員の自己管理に頼らざるを得ないガイドラインが守られなくなる可能性が高いと危惧していると伝えた。少なくとも、運航乗務員の特殊性に着目し、薬を服用している為に乗務できない等、地上勤務に耐えうる状態にあるようなケースでは、固定給部分はカットするべきではないと主張した。

会社としては、今のところ、全社的な整合性からも病欠時に運航乗務員に限り2つに分ける(欠勤とGJ可など)という考えはない、と述べた。機長組合は、運航乗務員の特殊性は考慮されるべき、と主張し、今後、運用上どのような取り扱いが可能かを含め、労使で真摯に協議していくことを確認した。

>>新人賃実施日について

交渉の中で、会社は以下のように説明している(機長組合ニュースNo.25-075参照)。

1月1日実施となる。1月25日支払いの賃金は、基本給部分は新制度で、乗務手当を含む各種手当は、旧制度基準で12月分が支払われる予定。2月支払いの賃金から、制度上完全に新人事賃金制度下での支払いとなる。一方で、賃金計算システム構築完了の目途は3月。システム改修が間に合わないため、2月支払いの賃金については、変動給部分につき別途定める新人事賃金制度に基づいた概算による仮払いが行われる。3月支払い賃金からはシステム改修後の正確な賃金が支払われる予定。2月支払賃金の仮払いによって生じた、正確な賃金との差額は、4月支払い賃金にて調整される。この間の社会保険料、税金等は、会社により不利益がないよう手当される。

機長組合は、システムの整わないうちに新制度下で賃金を支払うことは無用な混乱を招く可能性が高く、行うべきではないと指摘した。そこに対しては、暫定的な支払いについて会社が検証し、4月分での精算額のイメージを今後具体的に明らかにし、1月、2月の賃金明細の見方についても解説をつける等で、対応すると説明した。今後は、実際に不利益が生じていないか検証していくことに取り組むこととする。

>>勤務の公平性について

「乗員の配置」「勤務割の公平性」については今後の実態を精査しながら解決していく。
退役直前機種、新規導入機種の乗務量が相対的に見て少なくならざるを得ないことに対する手当て、あるいは、退役後、機種移行訓練に投入されるまでの間の処遇については、制度上対応できていないという労使共通の認識を確認した。新制度が実施される前に何らかの対策が必要であるという認識を支援機構マネージャー、運航本部長が共に表明している。

>>セーフティーネット的な措置について

機長組合は、賃金水準の激減に対し、経過措置を求めた。会社は、更生会社という観点から応じられない、と発言した。その後、何らかの手当てが必要であるという機長組合の主張に対し、会社は以下のようなセーフティーネット的な措置を実施した。

社外(株式会社ノースアイランド)に、JALI社員向け(希望退職に応じられた方も含む、と交渉で確認済み)相談窓口を設置(2010.11.15〜2011.3.31)。相談料は、切実に相談を希望している方に限るという趣旨から、自己負担額1000円とする。賃金減額に対する心理的、金銭的不安に対応するため、フィナンシャル・プランナーや税理士などの専門家が対応する。窓口の専門家が必要と判断した場合「意見書」が発行される。意見書を基に、社内融資や、法的なサポートといった具体的な支援策が会社から当該者に提供される。社員には11.1付で、労務部よりお知らせ文書が配布されている。

これを受け、機長組合は、今後、適切に運用されているか、相談者にとって不利益や不十分な点がないかをモニターしていく。

>>有給休暇(VAC)の取り扱いについて

VACを取ると実態上乗務機会が減り手取りが減る。機長組合としては標準的な乗務を行った際の基準でVACにも賃金を上乗せする必要があると主張した。会社は、この部分の賃金は基本給・職責手当等により月額賃金が支払われ、乗務手当はあくまで実際に乗務した時間に対応して支払うものであると主張している。

機長組合として、翌月の予定スケジュールが出た段階での乗務時間確定は、この問題を解決する上で有効であると指摘した。会社・支援機構は、変動給については元々実態に応じて支払うもので、所謂保障という概念は採り得ない。よって、予定より多い部分に対しても支払うのであれば、支払い原資が増えるので採り得ないし、逆に予定よりも多い部分に対して支払わないということは、労働に対する賃金としての考え方に整合性が取れない、よってこの考えは採り得ない、と主張した。

スケジュール変更の割合や原資に与える影響の調査など今後も議論を継続させ、また実際の運用の中で不都合がないか等、現場の声を元に労使で真摯に協議していくことを確認した。

>>通常の業務を超えた場合の対応について

運航本部とのこれまでの協議の中で、何らかの対応が必要であるという考え方では一致したものの、原資との関係で盛り込むことができなかった経緯がある。機長組合としては、当面一時金、臨時手当等で反映する仕組みを提案した。

これに対し、会社は、組合と協議に入る前にも必要性を検討していた項目でもあり、一時金を支払うことができるような然るべき時期に来た段階で、改めて協議に応じるという姿勢を示した。

>>再生協力一時金について

団体交渉の中で、年度半ばということもあり年度業績が確定していないが、現時点で足元の業績は概ね計画値を上回って推移しているという事実は労使で確認した。支援機構は、現段階では営業収支は黒字でも、まだまだキャッシュフロー的に見て薄氷を踏む状態なので、とても話せる状況にないが、最終的に収支が計画値に対し上振れすることなどが確実になった段階で、一時金について協議する必要があろう、という認識を示した。


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