日航乗員に打ち明けた 急減圧実験の被験者

「肺から空気が吸い出され、思わず酸素を吸った」

 

123便事故の再調査を求めるH

試験2.被験者1名、同乗者3名、操作員1名が低圧チャンバ内に入り、(事故調の推定による)123便事故機内の気圧変化を模擬し、高度650ftから24,000ftの気圧に約5秒間で減圧し、その後約20分間 高度20,000ft以上に相当する気圧を維持した。

被験者1名は減圧症の発生を避けるため搭乗前に100%酸素を吸入した後、このチャンバ内で試験開始から終了まで酸素マスクなしで「試験1」と同一の課題作業を実施した。

また同チャンバ内で、同乗者2名が前半10分間は酸素マスクを着用し、後半10分間は酸素マスクを外した状態で、また別の同乗者1名は実験中酸素マスクを着用したままで、各々 20分間選択反応作業(3色のうち各人に割当てられた色のランプ点灯でスイッチを押す反応時間の測定)を実施した。

 

事故調も人体への危険性を感じていた「急減圧実験」

この実験に先立ち、被験者は100%酸素を吸入しています。これは、急減圧が減圧症(血液の窒素が気泡となって血管や関節の中に詰まり、激しい痛みを伴う症状)を招く危険なものであるからこそ、こうした予防策を取る必要があったのでしょう。

これは、事故調自ら急減圧が「嫌悪感や苦痛を与えない」(事故調査報告書)とは考えていないことを認めたようなものではないでしょうか。

もちろん123便の乗員は、事前に酸素吸入などできる訳もなく、それでも減圧症の症状は見当たらず、報告書でも一切その記述はありません。

試験結果について、事故調は「試験1、試験2のいずれにおいても被験者及び同乗者とも低酸素状況下4〜8分後には知的作業遂行能力の低下を示したが意識の喪失は観察されなかった。」と分析しています。

しかし、この同乗者が酸素マスクを外して課題作業を行った時間は、試験1では12分間、試験2では10分間にすぎず、123便での状況(事故調の推定では2万ft以上を18分間)の2/3もしくは半分でしかありません。

「酸素を吸わなかった」?「急減圧の症状はなかった」?

 

事故調査報告書に事実捏造の重大疑惑が‥‥

1987年6月に発表された報告書では、試験2の結果として「高度24,000ftに相当する気圧まで急減圧した際、被験者には急減圧による格別の症状は認められなかった。」と述べています。

しかし、ここに重大な疑惑があります。

報告書によれば、実験は1986年7月及び9月に航空自衛隊航空医学実験隊の低圧チャンバで行われたとされています。

一方、日本航空機関士会の会員10名は、1986年11月、航空自衛隊航空医学実験隊を見学し、「緊急時における人間の行動について」の講演を聴いた後、低酸素症実験と急減圧実験を見学しています。参加者の一人は、同会の会報(1987年1月)の中で、次のような見学記を寄せています。

「最も印象に残ったことは、雑談の中で聞いた日航事故を想定して、客室高度650ftを7〜8秒かけて24,200ftに急減圧した実験で、今まで経験したことがないほど肺から空気が吸い出され、すぐにまわりが暗くなり(低酸素症)思わず酸素を吸ったという話でした。」

単なる見学者であった日航の乗員に、被験者がわざわざ嘘を言う必要があったとは思えません。この被験者の話が事実とすれば、報告書は「実験終了までマスクを着用しなかった」「格別の症状は認められなかった」と虚偽の報告をしていることになります。

また、航空関係者が行った急減圧実験でも、事故調による実験結果と大きく異なっており、報告書の信憑性に疑問を持たざるを得ません。

(機長組合ニュース15-64)

目次に戻る

 

トップページへ >>