事故調による低酸素症の実験

123便より短時間で切り上げたのは なぜ??

 

123便事故の再調査を求めるG

事故調は、低酸素症と急減圧の影響を調べる2つの実験を行っています。果たしてこの実験で事故の状況を裏付けられたか、検証してみましょう。

 


試験1.被験者2名、立会い医官、操作員計4名が酸素マスクを着用して、チャンバに入り、地上から24,000ftの気圧まで8分かけて減圧。24,000ftの気圧で被験者1名が12分間酸素マスクを外し、課題作業(引き算と短文朗読)を繰り返し実施した。その後当該被験者はマスクを着用し、他の被験者がマスクを外し12分間同じ課題作業を実施し、低酸素症による知的作業遂行能力の低下を調べた。

 

この実験では、以下の点で事故調が推定する123便事故とは状況設定が異なっています。

 

ゆっくりとした減圧ほど、酸素が減っても耐えられる

「試験1」での減圧率は約3,000ft/minで、事故調が推定する123便事故での減圧率の1/100に過ぎません。

しかも、123便の乗員は異常発生から墜落までのおよそ30分間操縦桿を動かし続けています。操縦桿に取り付けられたバネに抗し操縦桿を動かすには、およそ15〜20kgの力が必要です。一方、実験では身体運動の負荷がない点でも事故機とは状況が異なります。

緩やかな減圧よりも急減圧の方が有効意識時間は短くなり、また身体的作業(力仕事)をすることによって酸素消費量が増加し、有効意識時間が短くなることは事故調査報告書でも述べられています。

 

操作能力が失われる限界とされる12分で実験終了!

更に事故調の推定通りならば、123便の乗員は20,000ft以上の空気に曝されていた時間は18分以上ですが、実験は12分間で終わらせています。

このシリーズFで紹介したように、日本航空発行のEMERGENCY HANDBOOK」によれば「有効意識時間は高度2万ftで5〜10分」とされています。また、運輸省航空局が監修しているAIM-JAPANには20,000ftでは5〜12分間で修正操作と回避操作を行う能力が失われてしまい、間もなく失神する」952.【高高度の影響】)と記載されています。

事故調はなぜ、12分間で実験を打ち切ったのでしょう。

これでは「それ以上の時間をかけると顕著な意識障害が起きかねない」と恣意的な実験を行った、との疑念も生じてきます。

この実験結果を事故調は次のように分析しています。

「被験者Aは約5分後に引算課題への反応時間の増大、発話行動の異常、高調波成分の減少が生じている」

「被験者Bでは、4分頃に引算課題への誤答が目立っていること、高調波成分が一時的に減少していること、9分を過ぎて反応時間が漸増していることが見て取れる。(中略)総じて、低酸素による影響と見られる変化は、被験者Aに比べて少なかった」

そして、これらの結果から「123便に生じたとみられる程度の減圧は人間に対して直ちに嫌悪感や苦痛を与えるものではない」と結論付けています。

しかし、航空関係者が行った低酸素症の実験では、この実験とは様相が大きく異なり、短時間で顕著な低酸素症が診られました。なぜこのような違いが出たのか‥‥これについてはI号以下で紹介します。

(機長組合ニュース15-63)

目次に戻る

 

トップページへ >>