急減圧に見舞われていたら 到底対処できない

エンジン推力調整によるフゴイド運動の制御

123便事故の再調査を求めるK

=客観性に欠ける事故調の「低酸素症」の分析=

報告書では、CVRの解析から次の点を低酸素症に関連付けています。

@    異常発生の5分後から12分後にかけての機長と副操縦士の間の会話と、16分後から19分後までの運航乗務員間の会話が極端に少ない。20,000ft以下になったら会話が増えている。

A    異常発生から約9分後、F/E2度にわたり酸素マスクの着用を提案しているのに、機長は「はい」と答えただけで、マスクをつけなかった。

B    異常発生後9分から19分にかけて、社用無線で地上から4回呼び出しているのに、これに応答していない。また応答先が、東京か大阪かを決めるのに約1分間を要している。

C    異常発生から11分後頃に、機長の語調が強くなっている。

そして「緊急降下せず、乗務員が酸素マスクを装着しなかったことにより、乗務員の判断力及び操作能力は、低酸素症によってある程度低下していたと考えられる」との推論に導いています。

しかし、当時乗員が置かれた状況を考慮しなければ、正しい解析とは言えません。更にCVRは事故調査委員しか聞いておらず、会話が多いか少ないか、語調が強いか弱いかは、事故調の主観的評価でしかありません。

710分後頃は激しいフゴイド運動を繰り返し(垂直荷重:-0.5G~+1.8G、機首角度:+20°~ -15°)1619分後頃は360°以上の旋回が続いています。異常事態が発生し操縦に専念している時、ほとんど会話が交わされていないのは他の事故機のCVRでも多く見られる現象です

F/Eが酸素マスクの着用を提案したのに対し、機長が軽く受け止めているのは、それだけ激しい減圧ではなかった証ではないでしょうか。

飛行機の姿勢の制御に集中したい時、緊急性の少ない社用無線を後回しにするのは当然です。また通常操縦士が行っている無線通信を、F/Eが代行していますが、普段担当しない業務を任され、呼び出しの周波数が大阪/東京のどちらか確認し、どちらに連絡すべきか、それどころではない機長の意向を聞くのに手間取ったとも考えられます。

また、全く経験もない緊急事態に直面し格闘する中では、時に言葉が激しくなることもあり得ることです。

急減圧なら、もっと顕著な低酸素症になるはず

私たちは123便に「緩やかな減圧」があった可能性を否定するものではありません。しかし30万ft/minの急減圧によって機内が外気と等しくなり、2万ft以上の高度で18分間も曝されていたならば、他の急減圧事故や減圧実験また航空医学的にみても、とても「会話が少なくなる」程度では済むはずがなく、手の痙攣はおろか意識障害や生命の危険にまで及ぶ状況であったはずです。

 

事故調も認める乗員の高度な技術

「エンジン操作だけで機首の上下運動を克服」

事故調も乗員の対応能力を35分〜37分ごろ(組合注:異常発生から約10〜12分後)EPRの操作によりフゴイド運動が若干減少した」評価しています。

機体の激しいフゴイド運動をエンジン推力のみで修正するには、機体の動きを予測し対応するという頭脳の働きと、微妙なバランスのとれた手の操作が必要で、シミュレーターで実施しても難しい操作です。

訓練でも未経験の難題に対し、乗員は機体を落ち着かせることに一度は成功していますが、事故調の推定するような急減圧に見舞われていたのならば、到底これ程の技倆を発揮できたとは思えません。

(機長組合ニュース15-77)

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