OB諸氏に機長組合の考え方を理解していただくために

   

2009年12月27日

JAL OB・OGの皆様へ

機長組合では、年金制度の改定について現役組合員に対し、以下の見解を発表しています。

► 今回の企業年金制度改定(減額)については、OBとの格差はあまりに大きい。

► しかしながら、企業年金制度を維持する事が将来に向けての組合員の利益に寄与する。

► 機長組合は今回の制度改定を受け入れざるを得ないと判断する。

(交渉の経緯や判断の詳細は年金制度改定に関する機長組合見解をご参照下さい)

ここでは、OBの皆様から寄せられるご意見やご質問について、機長組合の考えをご紹介します。制度改定についてご判断の参考として頂けたら幸いです。

 @ 経営危機と年金改定の必要性は?

本年5月時点の年金制度改定の目的は、リーマンショック後の世界不況による赤字を減少させることでした。しかし、現在では公的資金の投入(企業再生支援機構の支援決定)を受ける為の自助努力、いわば「支援の前提」へと変遷し、当初の「制度改定による未認識債務の削減と特別利益の計上」は主たる目的ではなくなっています。

 A 年金を改定しなければ経営が圧迫されるのか?

JALは、社員の退職時の年金原資としての積立(通常掛金)以外に、設計利率4.5%と運用利率の差を年金基金に補填する必要があります(特別掛金)。毎年の補填額(特別掛金)は運用実績により異なりますが、2008年度は約155億円でした。現在の会計基準においては直ちに計上すべきものとは言えませんが、この補填額のうち未償還のものが企業会計上は未認識債務として扱われ、企業にとって負担であることは事実です。このような状況は、低金利が長く続いている中では、日本中の企業が共通して抱えている問題でもあり、JALの年金の動向が社会的に大きく報道される一つの要因ともなっています。

 B 年金を改定しなければJALは再建し得ないのか?

今回の制度改定が成立すれば、会社提示資料(12月14日)によると会計効果額として退職給付債務が1600〜1800億円程度圧縮され、年金の最低積立基準額も1400〜1600億円程度圧縮できる、としていますが、それが再建に直接大きな効果をもたらすわけではありません。しかしながら現時点の社会情勢を鑑みると、「年金制度改定」は企業再生支援機構がJALを支援するための必須の条件になってしまっていると私たちは考えています。「破綻の危機に瀕した企業の社員が、同業他社水準よりも遙かに恵まれた年金制度を維持しながら公的資金の投入を受けることを、国民目線を重視する現在の政権(民主党などの連立)が容認しない」との報道が続いており、私たちの懸念を「杞憂」だとすることは出来ないでしょう。

C 現経営と支援機構の関係は?

現在、JALはキャッシュフローが減少し、新型機購入等の為に金融機関から受けた融資を返済できない状態となっています。11月末の政策投資銀行による「つなぎ融資」によって延命されていますが、さらなる融資、または返済猶予が金融機関と合意されなければ、会社更生法等を申請(法的整理)せざるを得ない状況だと私たちは分析しています。破綻のリスクが高いJALに資金提供可能な機関は、もはや企業再生支援機構以外にはなく、私的整理で乗り切るには支援機構に頼るしかありません。しかし、法律によって「支援機構からの貸付金は3年以内に償還されなければならない」等、様々な「支援の条件」が定められている為、支援機構は企業再生の実現性をシビアに査定します。

機長組合は、企業年金制度は必要であり、今後も維持すべきことを確認した上で、今回の改定案におけるOBと現役の減額率の差を少しでも縮めるため、経営と交渉し追求いたしました。例えば一つの案として、第1年金部分の減額率是正のため、その原資に相当する通常掛金を社員と会社のそれぞれが相応に増額し、その代わりに退職金を原資とする第3年金を(現役部分については)廃止し、国民目線が注目していると言われる月例支給総額を押さえつつ、社員の福祉低下を少しでも抑えるために会社負担をやや増加させる提案なども行いました。しかし経営は、「年金の改定はOB 30%、現役 50%、平均44%という減額率、及び原資の削減を行うことで関係機関の了解が得られており、動かすことはできない」と述べ、変更の可能性を否定しました。先に述べたようなシビアな査定に基づき、支援機構が「条件が整わなければ支援は見送る」ことを選択することが十分に考えられる状況の中では、現時点で交渉によって回答を引き出す余地、すなわち、現経営の裁量の余地はなく、支援機構が「現在の年金改定案の実行」を支援のための条件とする実質的な権限を持っていることが、図らずも明らかになったと考えます。

 D 法的整理の可能性と年金基金の解散は?

法的整理となった場合の問題点は、飛行機が飛ばない状態を避けられるかどうかわからないこと、また、ブランド力が毀損されるため、更生段階での収益力が低下することです。また、金融機関の立場からは債権回収率の低下も予想されます。金融筋と政府の関係が現在と異なる旧政権下では、法的整理の可能性は少なかったと考えますが、現(民主党等)政権下では事情は違います。現政権は「飛行機が飛び続けることは重要」とは表明しているものの、その枠組み(例えば新旧分離方式)に目処さえたてば「負の遺産を一掃できるという点では法的整理は企業を再生する観点からは有利である」との判断に立つことは否定できず、法的整理の可能性は厳然としてあると考えられます。

法的整理に至った場合は、管財人の下で年金基金を解散し、年金資産を分配することになるでしょう。しかし、年金資産には積み立て不足額があり、分配前にこの不足分を埋めさせることが、金融機関の一般債権を返済することより優先されるかどうかについては諸説ある為、金融機関との奪い合いとなる可能性があります。そうなれば、分配金が最大でも年金総支給額の78%以下、現実的には70%を下回る可能性は否定できません。

なお、法的整理を行わずに、新たな立法措置より不足分を補填せずに年金基金を解散させようという、現時点では法的に不可能な手法までが検討されていると報道されています。この場合の分配金は50%程度となることが予想されます。このように会社を法的に整理することなく年金の受給権が制限された場合は、憲法に定められた「財産権」の侵害となるとの学説が有力ですが、仮に受給権者が違憲立法として提訴しても、この種の訴訟は最高裁まで行くことは必至です。訴訟期間も長く、現実的な損害が大きすぎることから、法的な妥当性を検証することも重要ながら、その前に、この様な事態(立法化)が避けられるなら極力避けるべきだと考えます。

 E JALは一度清算してやり直した方がよいのか?

OBの方から、「JALは心機一転してやり直した方がよい」というご意見を頂戴することがあります。過去の経営の対応の悪さや、無責任さから見れば、そのようなご意見も無理からぬことと思います。しかし、最近のJALは、安全アドバイザリーグループのご尽力や、一部経営の安全意識の向上、そして何よりも現場の社員が歯を食いしばって安全運航を支えてきたことにより、大きく変わりつつあります。一例を示せば、安全問題について組合と会社が協議し、現場の意見を反映する体制が作られており、これが「JALの労使として画期的なこと」と報道される状況もあります。しかしながらいま法的整理になれば、これまで積み上げてきた安全文化までリセットされてしまう恐れがあります。さらには、全員の雇用が守られるとは限りませんし、仮に新会社に採用されたとしても、労働条件が私的整理で再生するより低下するのは必至です。私たちは、現役社員は一人として法的整理を望んでいない、と考えます。

 F 経営者はこれまでの経営の失敗の責任は取らないのか?

企業として真の再生を果たすには、過去の失敗が総括され、新経営に生かされなければなりません。私たち機長組合は、今こそ経営として総括を行うよう求めてきました。おそらくOBの皆様が在籍されていた頃に、歴代経営者が失敗を認めたことは一度もなかった筈ですが、現経営はOBの皆様へのお手紙の中でも、経営の失敗を認め、今後の経営で改善する事にも言及しています。また、過去の経営者に対して責任を追及し、退職金等の返還を求めているようです。そして何よりも現経営は、社員の大きな痛みを伴う再生の過程の中で、二度と経営の過ちを繰り返さない証として、労使関係の抜本的な見直しについて組合と真摯に協議することを回答しています。現在の経営のトップは再生の区切りに伴い、進退を明らかにすることを表明していますが、私たちは現経営との交渉が有効な期間を最大限活用し、経営方針の転換と労使関係の改善を実現させたいと考えています。

 G 年金は今後も存続できるのか?

今回の年金改定は、設計利率を長期国債に連動するキャッシュバランスとすることによって運用リスクを、更に現役に限って言えば、現行制度では全額会社負担となっている終身部分の原資を削減し、将来にわたるリスクをゼロにしたと言えます。したがって、経営から見て、今後さらなる切り下げを実行せざるを得ないようなリスク部分は残っていません。現在、年金基金には資産が約2900億円あり、今回の改定により積立不足(企業会計的には未認識債務)が圧縮され特別掛金がいずれゼロになること、更にJAL企業年金基金による資産運用も基金財政委員会等で堅実に運用されていることを考慮すると、企業の負担は通常掛金以外には発生せず、社員やOBの大きな痛みによるとは言え、年金基金は企業の収支状況からの独立性と、長期的な継続性を保証されたといっても過言ではないでしょう。

私たち機長組合は、今回の年金改定が大幅な減額改定案ではあるものの、企業年金制度自体の維持は、将来にわたってOBの皆様や現役社員の利益に寄与するものと確信しております。従って、私たち現役社員が、今後も企業年金制度の維持・向上に向けあらゆる工夫と努力で取り組むことをお約束いたしますし、その責任があるものと考えております。

参考資料

12月18日 年金制度改定に関する機長組合見解

12月 3日 年金制度改定に関する機長組合のスタンス

10月23日 JAL再建に関する機長組合のスタンス


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