年金問題

   
2009年10月23日付け機長組合見解抜粋)

「経営が誠意を見せれば年金に関する交渉は進む!」
 

 経営は11月23日に改定の具体案を示したものの、交渉はこれから!

社員の不安を引き起こした責任には、誠意ある交渉で答えるしかない!
年金問題と報道内容を解説するシリーズH(まとめ)

本最終号では状況をレビューし、123日現在の機長組合のスタンスを説明します。

<状況のレビュー社会の中でのJAL、との観点を中心に>

*       JALを巡る情勢は「自主再建」から「外部機関の関与」に激変

08年度決算が大幅な最終赤字(約▲630億円)に終わり、かつ、09年度予算も同様の水準が予測され、さらにはキャッシュフローの低下から、多額の資金導入が必要な状況となったため、JAL09年度の事業計画により再建計画を発表しました。同時にJALは近年にない「中期事業計画が更新できない」ほどの状況に陥り、当座1,000億円の資金は政府保証の借入金で確保したものの、12月初頭までにさらなる資金支援がなければ、事業が停止するとまで報道されました。

2000年の会計基準変更以降、各企業は数年の収支悪化が資金繰りの難しさを呼び、その資金繰りの厳しさが収支に反映する、という現状にあります。

・またJAL独自の状況として、過去の経営が放漫経営とも言える失敗を繰り返し、社内に資金蓄積が行われてこなかったという問題がありました。

・その脆弱な資金・企業運営状況の上に、リーマンショックや燃油の乱高下などの悪材料が重なり、JALは収支状況も資金状況も極端に悪化したものです。

・その後、JALは収益力悪化→信用格付けの大幅格下げ→株価低迷→集客力の低下→収益力のさらなる悪化と、当初の想定を大きく超える悪循環に陥っています。

・一方、JALに資金を投下しており今後の支援も要請されている金融機関には、融資した企業の状況が悪化すれば、貸倒引当金の計上などにより自らの収支も悪化し、それが株主と社会の批判を呼ぶ、という状況もあります。

・保証なしに「追加融資」に応じる金融機関も無い状況でJALは「追加融資への政府保証」を要請しました。これに対して政府は「有識者会議(自公政権)」や「タスクフォース(民主政権)」が再建策を構築することを支援の条件としました。

・こうした流れを経て現在では、ADR(債権者集会)・民主党のJAL再建会議・企業再生支援機構が、政府保証も絡め、JALの再生支援の論議をしています。

・一方で、私達航空労働者が長年指摘してきた「政府・行政が土木関係企業などとの癒着や外交関係の中で空港開発を推し進め、航空会社にそれに見合った路便の運航を誘導して、航空会社の経営を圧迫している」との認識は広がり、政府も航空行政の一部修正方針を表明する事態となっています。

・同じ背景の下、必要以上の航空機の導入が推し進められた状況もありますが、この問題は広く報道されるには至っていません。

 

*       その中で、本来再建に直接関係ない企業年金改定への
圧力が

・当初年金問題はJAL経営が自主再建方針の下「年金債務の削減により収支を改善する」との方針を発表したことから始まりました。

・組合は年金改定の具体的な交渉を求めましたが、経営は交渉を引き延ばし、その間にJALの収支はさらに悪化し経営の想定を超えていき、外部機関によりJALの再建が論議される過程の中で、年金改定問題は「収支改善策」から「再建支援の条件として社員・OBの痛みをも求める目玉施策」へと変質して行きました。

・具体的には9月の民主党政権発足以降、関係大臣やタスクフォースが一致して「年金の改定が再建支援の条件」と繰り返し表明する状況となりました。

・さらにはこの風潮にマスコミも同調し、また現時点でJAL再建を論議している企業再生支援機構も「企業に再建の枠組みと具体案を提示し同意されれば再建資金の提供をする」との任務にもかかわらず、再建案の提示前から「再建策提案に向け年金改定の成否が大きく関与する」と発言するに至っています。

・シリーズAで説明したとおり、「年金改定」がなければJALの再建ができない、との財政上の理由は全くありませんが、それにもかかわらず社外の圧力はさらにエスカレートし、多くの政治家が「年金改定が実施し出来なければJALは法的整理(破たん、または会社更生法の適用)しかない」とまで発言しています。

JALの経営陣もこの外圧を即座に受け入れており、組合との面談で社長がその旨を繰り返し説明するに至っています。

・「法的整理」は、JALの社員にも、JALの円滑な運航継続(国民の利便性)にも、さらには債権者(金融機関)にも好ましいことではなく、本来はそれを避けるための努力が全ての関係者により尽くされるべきですが、「年金改定」がやり玉に挙げられ、あたかも「法的整理が嫌なら年金改定に同意しろ」とも言わんばかりの風潮が広がっていることは、極めて残念なことです。

・私達はJALの全社員と全OBが、JALの「法的整理」によらない再建と将来の発展を望んでいると信じており、年金問題は当事者(経営・組合・OB)が真摯に話し合えば、十分に解決できると信じています。しかし、前原国交大臣が当初「JALには自主再建してもらう」と発言していたにもかかわらず、後日「法的整理がないとは言っていない」と前言を翻したことからみても、年金問題の推移によっては、外部機関が検討している再建案が好ましくない方向に向かう可能性も、完全には否定できません。
 

*       憲法上の権利を無視した「法的措置」は
避けなければならない

・確定給付企業年金法は「改定は加入者と受給者・待期者のそれぞれ2/3の賛成で成立。給付削減が行われた場合、受給者・待期者は、改定前の条件による最低積立基準額(特例一時金)を受領して年金からの脱退することも選択できる」旨、定めており、この定めは憲法の「財産権」にも基づいています。

・しかし、政府の中では年金を強引にでも改定させようとの動きもエスカレートしており、当初「年金改定は現行法に沿って」と発言していた厚労大臣も含めて、関係5大臣が「法的措置も検討する」との主旨の文書に署名したことで、現行法とは違う取り扱いを狙うことが検討されていると報道されています。

・その背景には「公的資金(税金)で資金援助をしてもOBの最低積立基準額(特例一時金)により投下資金が流出する」との主張があります。一般国民に浸透しやすい論旨であることは否定できませんが、会計上の根拠もない債権者の都合だけの理屈であり、またOBの憲法で認められた財産権を無視した主張です。

・組合は法律の専門家の意見も聞いていますが、憲法上の問題と同時に、仮にこの法的措置がもし強引に実行された場合、日本中の企業の年金にも波及する恐れが多く、法的措置が行わせることは出来得る限り避けなければなりません。

<状況のレビュー社内を中心に>

*  労務・経営の無策は明確、しかし社員・OBの意思結集も不十分

・経営は5月に「年金額を50%以上超え削減し、収支改善と未認識債務の削減に充てる」との方針を発表した以降、OBとも各組合と話し合いを行いませんでした。

・この労務・経営の姿勢がOBの強い反対の姿勢につながり、「JAL企業年金の改定について考える会」のHPには、受給者・待期者(合計約9,000名)の1/3を大きく超える反対署名が寄せられました。(121日現在3,870名、約43%)

JALの信用不安が広がり、再建を検討する主体が「有識者会議」→「タスクフォース」→「ADR・民主党再建会議・企業再生支援機構」と変遷する中でも、政財界が「年金削減」を求める声は連日報道され、社員の不安を掻き立てています。

・労務・経営の無策がOBと社員の不安に大きく結びついていることを、経営は真摯に反省する必要があります。

・社内各労組も、再建の道筋や年金についての経営との論議が十分に出来ておらず、JALの再建論議が、社内より社外が先行しているという異常な事態です。機長組合には、早急に各組合との意見交換を行い、社員の意思結集を図ることが求められています。

・こうした状況で、1123日の年金改定の具体案が提示されたわけですが、現役社員には「会社原資の削減」をも含み非常に厳しい内容であり、社員の反発は強く、労務・経営はこれまでの無策を反省し、このシリーズの表題にあるように「誠意ある交渉で答える」ことが必要です。一方改定案の内容自体には問題点は多いものの(対応すべき点は次章で述べます)、会社の共済年金や保証積立、一般の金融商品などと比べても、企業年金制度を維持することの重要性は歴然としており、かつ、企業年金であれば、将来改善させることも可能です。

*  1123日にようやく出された年金改定案の概要(シリーズFより再掲)

82歳までの支給総額が、現役社員は現行の47%OB70

(「現行」とは第12年金には10年保証終身、第3年金に10年確定を選択した場合)

60歳時点での支給月額が現役社員は現行の55%OB74

・切り下げの手法は給付利率の切り下げ(4.5%→1.5%)に加えて、現役社員には会社説明によると「終身部分の会社の年金原資削減」を併用し切り下げ幅拡大

・一方で年金および企業会計は、設計利率を長期国債の運用利回りにリンク(最低保証と現行利率は1.5%)させることにより、将来の費用が増大する最大の「リスク」を回避できる内容(ほぼ恒常的に、年金給付利率≦会社資金運用利率となる)

<年金問題に関する機長組合のスタンス(12月3日現在)>

JALが安全運航、良質なサービス、利用者・国民のための確実な運航を維持する為には、広く社会の賛同を得た中で「法的整理」によらない再建を成し遂げることが不可欠です。機長組合は「法的整理」を避けるために「年金の改定」が必要ならば、それを否定するものではありません。しかし、社員の理解のためには、経営トップが1123日の改定案にこだわらず、竹中副社長が1126日の機長組合との団交で約束した「(改定案は)アイデア段階だ。組合のご意見を伺って、反映できるものは反映したい」を誠実に履行し、以下のような対応をすることが必要です。

今回の年金改定案には再検討が必要

・現役社員に対する改定案はOBへの案とも格差があり過酷な内容である。このままでは社員に老後の生活への不安を与え、社員の賛同を得られないばかりか、真のJAL再建にもつながらない。OBとの格差は「現役のみ終身部分の会社年金原資を削減する」との考え方から生じている。今回の案によれば給付利率の大幅な切り下げにより、企業・年金財政は費用面の最大の「リスク」を解消することになる。経営がそれ以上の費用削減を狙うあまり、現役社員が経営の方針から離反するような案を提示しては本末転倒である。経営は機長組合の主張を良く聞き、特に現役の改定案について再検討すべきである。

OBの最低積立基準額(特例一時金)の問題は、OBに闇雲に理解を求めるだけでは不十分である。OBが「引き続き企業年金の支給を受け続けよう」との判断が出来るように、経営はOBの意見をよく聞き、アイデアを駆使して十分な工夫をすべきである。

・年金の改定に「法的措置」が導入されることは、経営も回避の努力を尽くさなければならない。経営は「確定給付企業年金法」による改定を進めようとしているが、その実現性を担保するものは経営の誠意である。
今後の交渉において社員・OBが経営の誠意を感じなければ、結果は予断を許さない。

・以上の項目は、すでに労務・年金担当者の責任範囲を超えており、今後は、経営トップが直接、私達との交渉を行うべきである。

 機長組合は、経営トップとの交渉を求める一方、各組合に機長組合のスタンスを説明するとともに、早急な意見交換を行っていきます。

 過去の経営姿勢を反省し、社員も利用者国民も納得するJAL再建を図ること

経営が「再生支援機構と協力して作成する」としている再建策の構築に当たっては、以下に示すような過去の問題点をしっかり踏まえて、今後の計画に生かすことが不可欠です。そして、私達社員だけでなく、利用者・国民をまきこんで、航空の健全な発展に向けた論議を進めていくことが必要であり、それが私達が求めるJALの真の再建への道であります。

「シリーズニュース:
  JAL
再建には、過去の経営の問題点を反省し、今後に生かすことが不可欠」参照

JAL再建に向け不可欠な安全で良好なサービスは、社員のモチベーション維持が大前提であることを認識すること

・行政に過剰な路便計画や公租公課の改善を強く働きかけること

・機材導入等事業計画の問題点について見直し、改善の方向を明らかにすること

・放漫経営の反省を踏まえ、燃油ヘッジも含めた経営計画の透明性を図ること

・労使関係の改善に向け、以下の点で具体的な手法を明らかにすること

1)不当労働行為などによる分裂労務政策と決別すること

2)労働条件決定は、全組合との協議と合意によること

・今後、JALの再建にともない、社員に確実に報いることを現経営が約束すること

以上

 

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