人件費施策について

 

1四半期決算、7月仮決算、8月27日付け社長文書を踏まえた、
100億円賃金カット」への9月4日機長組合見解

   
 

8月7日に、前年同時期も予算も大幅に上回る内容の第1四半期決算が、また8月27日には4〜7月の仮決算が発表され、日航労務の推し進める「5%、年間100億円の賃金カット」が、現状の収支面からも不要であることが、さらに明らかになっている。

また、労務は8月27日に機長組合の5月30日見解(以下、「0530機組見解」)に対する回答として、社長文書(ILZ/C-043 「JCA22-34等について」;以下「0827社長文書」)を提示し、同日JJ内各労組にも同主旨の文書を送付したが、その内容は後述するように、本日(9月4日)の交渉を踏まえても、機長組合の指摘への答になっていないばかりか、社員の疑問に真摯に答えたとは、到底言い難いものであった。

機長組合は、JJ労組に結集する組合の一員として、経営がもしこの施策を一方的に強行した場合は、あらゆる取り組みで徹底的に闘う決意をJJ見解として明らかにしているが、本見解ではそれとは別に、安全運航の最終責任者である機長の集団として、安全運航の基盤である真の日航再建に向け、社員の反対をよそに「合意」に至ったJALFIO−労務のこれまでの交渉内容を分析するとともに、現時点での経営企画室(BAZ)、労務、また自らを「責任労組」と称して恥じないJALFIO執行部、そして経営トップの姿勢を批判し、直ちに改めることを求めるものである。

 
<第1四半期決算と7月仮決算の概要>

08年度第1四半期の決算内容は、JALI(旧JALI+JALJ)ベースでは営業利益は予算対比+258億円、前年対比で+143億円、連結ベースでも営業利益が前年対比で+124億円と、燃料ヘッジの効果はあったものの、新聞各紙に「日航黒字転換」と報道され、企業会計の専門家(機長組合顧問)も「見事な黒字転換」と評する状況となった。さらには7月仮決算においてもこの状況は変わらず、営業利益は予算対比+263億円という、好調な水準を維持している。

 また、BAZが予算においては前年比約900億円増、第1四半期決算時の修正説明では前年比1500億円増加すると職場の不安を煽った燃油費も、4〜7月の4カ月で前年対比152億円の増に止まっている。

 旅客需要の動向との関係では、4〜7月の国際線の需要(RPK)が前年比−2%と路線リストラの状況を示しているのに対して、収入単価は実質15%上昇している。また国内線ではRPKが4〜7月では前年対比1%増、7月単月を見ると実に5%増と、他社との競争が激化している中では、国際線ともども職場の頑張りにより非常に健闘している状況である。

 

BAZの姿勢について>

機長組合は第1四半期決算発表を踏まえ、西松社長以下の経営陣との交渉を8月11日に行ない、さらには「0827社長文書」に関わる交渉を、社長・BAZが出席しない中で、9月4日に行った。それらの交渉の中で明らかになったBAZ姿勢の主な問題点は、以下の2点である。
 
問題点1: 人件費施策に固執し、真の日航再建に向けた柔軟な情勢把握ができていない。

 
9月4日の交渉では、2007年度末の段階でBAZ担当役員は金融機関や大口投資家から「優先株発行に応じるためには収益性についての担保が十分であると判断し得る、安定的・継続的な施策」を求められ、「年間100億円規模の人件費追加施策」を答えたことが明らかになった。このこと自体は社員の福祉を無視した許されないことではある。しかし、仮に増資実行の条件が「人件費追加施策を含む利益計画」としても、正に「配当する資金に色はついていない」のであり、これは8月11日の交渉の中で西松社長も竹中副社長(経営企画室長)も認めている。配当所要資金が営業活動により捻出し得る状況の中で、社員のモチベーションが下がることも承知で人件費の切り下げに固執するならば、それは日航再建に逆行する姿勢である。交渉で一時は竹中副社長が「どれだけ利益が上がっても人件費の切り下げはやる」と発言し紛糾した。その後社長がこれを釈明したものの、この発言の背景にはBAZ担当各役員の「人件費を切り下げるしかない」という頑なな思い込みが見え隠れしている。さらに金山取締役は「人件費切り下げは今決めないと間に合わない」と主張した。下期に予定した人件費の切り下げ50億円(正確には49億5千万円)を月当たりにすれば8億円余りである。つまり実施が一ヶ月遅れても、営業費用が年間で8億円増加するに過ぎず、昨今の利益見通しの外れ方から見れば、「今決めないと間に合わない」というような金額ではない。収支に対する影響はわずかであっても、強行することによるモチベーションへの影響は計りしれないものがあるため、組合が真摯な協議を求めているのである。労務・BAZは「0827社長文書」で「下期収入の大幅な下振れ懸念が払拭できない」と、あくまで5%の賃金カットに固執しているが、下期に懸念があることでは機長組合が「0530機組見解」により「08年度決算の推移を見ながら真摯に論議せよ」と主張していることを否定する理由には全くならない。また社員のモチベーションについては、「十分説明して社員の理解を得ることが経営の責任」「将来的なビジョンとして還元を具体的に示した」と言うが、社員は自分たちの頑張りで利益が予算を300億円近く上回っている状況を見て、人件費のみに頼った経営施策を批判しているのであり、その自覚なしに経営がいくら説明しても、社員の理解は決して得られない。また「還元の具体化」に至っては、本件5%賃金カットとは一切関係ないことは、後述するとおりである。このような社員の気持ちが分らない者に、企業を経営する資格はない。企業は人で成り立っており、しかも航空会社の経営が社員からの信頼を失えば、次に来るのはモラルの崩壊であり、安全上のトラブル、最悪の場合には事故になりかねないことは、日本航空の歴史が明確に物語っている。
   
問題点2: 日本航空の現在の収支状況の詳細、特に人件費の切り下げに関する部分の説明を拒み、十分な資料も提示しない。

 前述の通り、7月までの決算は好調な状況であり、今年度経営が「人件費の切り下げ」で捻出する予定であった優先株への配当所要資金の一部(50億円)は、すでに営業利益のみで手当することができると想定し得る状況である。しかし交渉の中でBAZ担当役員は「営業収支は予算を上回っているが、それは燃油ヘッジ益によるもので手放しで喜べる状況ではない。今後はシンガポールケロシンで言えば160ドル/バレルという高値が予測され(実際の8月初旬の市況は140ドル/バレル前後)、通年の燃油費は予算対比580億円増と想定せざるを得ない」と一方的に説明し、「0530機組見解」の指摘「08年度収支の流れも見ながら、具体的な施策を労使の慎重な協議で決めて行くこと」に対して「0827社長文書」は、経営協議会の議論を踏まえることなく、あくまで「安定的・継続的に優先株への配当原資を確保するのは人件費施策しかない」と繰り返すのみである。上記問題点1に示した事実を無視して、このような主張を続ける労務・BAZは、正に厚顔無恥としか言いようが無い。


BAZは07年度第3四半期終了時点においても、現在と同様に営業利益が予算を大きく超えていたにもかかわらず「燃油費の高騰が考えられ、当初の利益目標は変えられない」と主張したが、結局収支上は不要であった退職金の切り下げ強行に奔ったものであり、BAZの主張に説得性はない。07年度の最終連結決算は、予算も中間決算時の見通しも大幅に上回り、900億円の営業利益、698億円の経常利益、169億円の当期利益を上げている。この点について「0827社長文書」は「利益目標は必達であったから保守的に判断した」と説明するが、「社員が頑張るように“厳しい”と言っておいた」と言っているに等しく、日々、収支を気にして懸命に頑張って来た社員を、BAZが愚弄する説明である。

BAZには職場の納得行く情報の開示と精緻な交渉に応じることが求められている。
 

<労務担当役員と労務部の姿勢について>

労務担当者の本件交渉における問題点は、JALFIOとの合意形成だけを目指して他の労組を軽視したこと、及び機長組合との約束を守らず、おざなりの「経営説明会」を開催し、社長に血の通わないメッセージを読み上げさせて、「労使交渉を行なった」との実績作りのみに奔走した、という2点である。
 
問題点1: JALFIOとの合意形成だけを目指し他の労組を軽視すること。

経営の人件費切り下げの具体案を受け、機長組合は5月30日にいち早く見解を発表して経営トップとの交渉を求めた。しかし、労務部は「機長組合見解は経営に報告した。回答は検討中でありまだ提示できない。社長との交渉を求めていることは理解しているが6月中は無理であり、7月以降に行なうように検討している」と説明するのみで、8月11日の社長出席の交渉まで引き延ばした。しかし一方では、機長組合のこの申し入れには回答を渋っている間に、JALFIOとの交渉を重ね、7月10日には「普通株主に対しても安定的に配当できるようになった後の臨時手当についての考え方や、利益水準が計画を上回った場合の取り扱いについての具体的な考え方を早期に示すことができるよう検討する」と表明し、さらに7月22日には「還元策」を具体的に提示し、また中期期間終了後の再協議を約束し、JALFIO執行部に賃金カットに応じる決定をさせてしまった。

7月22日の「還元具体策」の表明は、JALFIO以外の組合にも伝えられたが、JALFIOとは交渉の場で提示し質疑を行なったにも関わらず、他の労組には電話してメモをファックスで送付する、という軽視ぶりであった。

   
問題点2: 機長組合との約束にも関わらず、おざなりの「経営説明会」を開催し、社長に血の通わないメッセージを読み上げさせ、交渉実績だけを積み上げようとした。

団交で「機長組合と社長との交渉」を約束したにも関わらず、誠意を持ってセットせず、ようやく8月11日に交渉開催の運びとなったが、その場でも当初「第1四半期決算に関わる経営説明会」と主張して、労務の都合だけを押し付けようとした。さらには機長組合の見解への「回答」についても「経営で検討している」というのは、全くの偽りであり、この交渉の中でBAZ担当役員に「年度決算は厳しい」との説明を行わせ、それを持って「経営の説明に回答が含まれている」という理屈で切り抜けようとした。またその場では社長が挨拶を朗読したが、機長組合の主張に対する見解は一切なく、「優先株式が普通株式に転換された場合の株主価値の希薄化論」や「燃油費の大幅高騰予測(07年度末の虚偽の説明の録音再生に近い)」など、BAZと労務担当者が用意したと思われる血の通わないメッセージであり、ようやく「0530機組見解」への回答として出された「0827社長文書」も大同小異の空虚なものであった。
 

<増資に伴う経費を人件費で賄うのは筋違い>

企業会計の専門家によると、増資に必要な経費(配当所要原資)は、増資することにより発生したメリットにより賄うことが原則であり、その原則から外れれば、企業はより以上の歪を内包することになる。今回の増資により発生するメリットとは、2月29日付け会社リリースの広報メモによれば(以下要旨)、

@.航空機投資及びその他の設備投資を実施し、運航コストの削減とお客様選好性を向上させ、収益性を改善し企業価値を向上させる。

A.航空燃油費市況の高止りや需要の急減など、イベントリスク等の環境変化にも対応できる資本充実と、有利子負債削減ベースの加速化で財務体質を向上させる。

2点である。すなわち、この増資の経費を賄うべき資金は、@.で言えば営業収益の増加分であり、A.で言えば支払い金利の減少による営業外費用の削減分である。

また、メリットとしてA.で「燃油市況の高止まり・・・イベントリスク等の環境変化にも対応できる資本充実」を挙げておきながら、燃油高騰やイベントリスクを理由に「(安定・継続的な配当原資は)人件費以外にない」と言うことは矛盾している。

 
JALFIO執行部の本件合意の判断について>

JALFIO執行部は「なぜ人件費施策なのか」「なぜ恒久的な施策なのか」については、強い拘りをもって交渉する旨、職場に表明していた。しかし結局、いずれについても安易な結論に飛びついて本件の協定化に合意し「責任組合(最大組合)である」と嘯きながら、8月7日に組織確認(大会決定)を行なった。

このJALFIO執行部の判断は誤ったものであり、職場の声を無視したものである。

仮にJALFIOの論点に則ったとしても「収支改善対策を行なってもなお人件費削減が必要であるかどうか」との判断には、収支状況についての経営との詳細な論議が必要だが、JALFIO執行部は判断にあたり、第1四半期決算時点の収支状況や、新たな路線リストラ効果に全く言及しないばかりか、「協定化」の組織決定を、職場の努力による奮闘の跡が明確な第1四半期決算発表が行なわれた同日(8月7日)に、その内容を職場に知らせないまま行っている。   

JJ労組のアンケートによると7000名もの社員(少なくとも3000人以上のJALFIO組合員を含む)の98%以上が本件切り下げに反対しているが、JALFIO執行部の判断は、この職場を欺くものである。詳しい状況を知らせずに組合員の賛否を問い「協定化」を早々と決定した以上、「大会にかけて組織決定を得た」との言い分けでJALFIO執行部は責任を免れることは出来ない。

「なぜ人件費施策なのか」に関連してJALFIO執行部は、労務の「還元の具体化案(普通株主に配当が出来るようになった後の年間臨時手当の水準)」を、本件賃金カットと引き換えに得た成果である、と言わんばかりの教宣を行なっているが、これは全くの筋違いである。そもそも現時点の年間2.0カ月程度の一時金は、07−10中期計画において経営から示されたものであり、社長は繰り返し「中期計画の目標を達成したら還元する」と約束している。すなわち、今回の労務部の表明は、この「還元策」に関して中期終了以降の考え方を示したものに過ぎず(機長組合も具体的な明示を求めていた)、本件5%賃金カットとは一切の関係を持たない。

さらにはJALFIO執行部は「なぜ恒久的な施策なのか」との当初の拘りに対して「優先株式発行から3年後の時点で経営状況の確認を行うとともに、人件費施策等のレビューを含んだ協議を行う」と交渉議事録に残すことを評価しているようだが、労務は「3年後に、JALFIOから聞かれたら論議する」と答えたに過ぎず、それを「評価」するJALFIO執行部は笑止千万・噴飯ものである。こうした曖昧な説明を「成果」として経営に迎合し、合意を全社員に押し付けることは許されるものではない。

 

<機長組合が改めて経営のトップに求める決断>

これまで、BAZ、労務、そして「責任組合」を自認するJALFIO執行部の言動を点検したが、到底、経営とJALFIO以外の組合が真摯な交渉が行なえる状況ではない。また「0827社長文書」において「貴組合が(「0530機組見解」で)指摘する施策は採り得ない」と主張しているが、根拠が全く具体的に示されておらず、到底容認できない。

経営のトップはこの機長組合の主張を踏まえ、早急に以下の行動を決断すべきである。
 

1.現在社内は「BAZが投資家の利益のみに拘泥して社内の労使関係を一顧だにせず、労務はいささかの労使間の歩みよりも拒絶して、経営施策についてはBAZのメッセンジャーとしてしか機能せず、JALFIOとの合意形成だけに狂奔する」という状況である。これを改めるために、本件については社長が直接統括する体制とすること。

2.収支状況と人件費施策について特化した交渉に社長がトップとして出席すること。社長出席が困難な時は代表権を持つ役員(本件に関与が著しいBAZを除く)を代理指名し、交渉での意思決定を誠実かつ迅速にするとともに、社長が交渉の状況をBAZ・労務以外から直接正確に掌握する体制を構築すること。

3.全役員が出席する会議を開催し、以下の視点で「0530機組見解」への回答を再検討し、その結論は社長自らが肉声を持って全組合に説明すること。

 

◇ 中間決算とその時点の収支見通しを含め、08年度収支の状況について機長組合と真摯に協議すること。とりわけ営業収支が予算を260億円以上上回る現時点の決算状況を、08年10月からの人件費施策(下期分は50億円)について真摯に協議できる好機と捉え、当面、10月からの施策強行は行なわないことを明言して、交渉を尽くすこと。

◇「燃油費の高騰のため、路線リストラの努力がなければ年度利益目標も達成できない状況」とのBAZ主張を、現時点の収支との対比で根拠を示して詳細に説明すること。なおその際には、同様の説明をしながら、結果的には2週間で420億円も利益見通しが狂った07年度末説明の分析・総括を「保守的な判断」などという曖昧な言い訳で無く、具体的に責任を持って示すこと。

07年度当期利益のうち予算を超えた100億円の中から50億円を、経営が08年度予算に繰り入れている人件費施策の実施が遅れた場合に備え、蓄えること。

◇ 一連の再生中期計画(07‐10、08‐10年度)における人件費関連施策全般への経営の基本的なスタンスは「社員からの借金として、いずれ返還する」ことを明言するとともに、これまでに社長が約束した各還元策を具体的に明示すること。

  上

2008年9月4日

日本航空機長組合

 

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