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私たちは空の安全を脅かす有事法制の廃案を求める

政府は有事法制三法案が現在国会で論議されています。1999年に成立した周辺事態法は「米軍の後方支援として、民間にも必要な軍事協力を依頼することができる」という内容を含むものであった。 私たち乗員を含む航空労働者は、民間航空の軍事利用は国際民間航空条約(ICAO条約)に反すること、また武器・弾薬や軍事物資輸送などの兵站は敵対行為と見なされ、相手から攻撃される危険性が生じるばかりでなく、我が国の民間機にテロやハイジャックの危険性が高まることから、周辺事態法に強く反対してきた。

周辺事態法成立にあたっては、航空経営者の集まりである定期航空協会も事態を憂慮し、周辺事態法に対する基本的考え方として以下の三つの原則を政府に求めた。

?@ 協力依頼の内容が航空法に抵触しないなど、法令等に準拠したものであること

?A 事業運営の大前提である運航の安全性が確保されること

?B 協力を行うことによって関係国から敵視されることのないよう、協力依頼の内容が武力行使に当たらないこと

ところが、今般論議されている有事法制は民間を強制的に、しかも罰則を伴って動員する規定を定めて、今回の政府原案では物資保管命令に違反する業者に対して、懲役刑を含む罰則規定が定められているが、法案が公共輸送機関を「事態に対処すべき指定公共機関」として定めている事を考えれば、2年後に予定されている更なる法律で、私たちに強制と罰則が準備されていることは明白である。

更に重大な事は、有事法制が、我が国への武力攻撃事態への対処だけでなく、日米新ガイドラインに基づく周辺事態発生時にも発動されることが国会の論議で明らかとなったことである。

また有事法制は航空機の航行の制限に関する措置も定めている。強制力を持つ有事法制は、航空法に定める「機長の権限」を脅かすだけでなく、航行の安全を守るべき航空法そのものを否定する結果とならざるを得ない。有事法制は民間航空を軍事利用することそのものであり、疑いなく民間航空の健全な発展に逆行する法律である。現に日本航空の副社長も4月5日の団体交渉での有事法制についての論議の中で「民間航空の安全を脅かす事態は避けるべきだ」と明言している。

私たちは労働組合の立場からも、有事法制に無関心ではいられない。法案は「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重され、これに制限が加えられる場合においては、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものでありかつ、公正かつ適正な手続きの下で行われること」と規定している。すでに政府答弁で公共の福祉に反するデモや集会を禁ずることが明らかになるなど、労働組合の団結権や団体行動権、を制限するもので労働組合にとって死活問題である。

私たち機長組合は、有事法制による民間機の軍事利用が国際民間航空条約に反し、相手国から直接標的にされかねないばかりか、我が国の民間航空に対するテロやハイジャックの危険性をも高める結果となることから、民間航空の安全運航を脅かす有事法制に反対するとともに、今、廃案を求めるものである。

2002年5月16日 日本航空機長組合 臨時組合大会