「客室乗務員監視ファイル事件」

   

2007年3月30日

客室乗務員個人情報無断保有事件」 に関する機長組合見解

 3月29日、JALFIO執行部による「客室乗務員監視ファイル(個人情報無断保有)事件」に関して、会社およびJALFIOの報告書が発表された。この両報告書を踏まえた、本事件に関する機長組合の見解は以下のとおりである。

会社およびJALFIOが公表した両調査報告書では不十分である

社内・JALFIOの両調査報告書は事実関係等、情報の開示が全く不十分であり、JJ労組の公開質問状にある疑問への答えにもなっていない。また社内調査は、調査委員会のメンバーすら不透明である。更なる情報開示とともに公開質問状への回答、および早急に説明の場を設けることが必要である。

JALFIOの調査によれば、「情報を寄せた人の主観的な見方であるものの、中には宗教、支持政党、病歴、家族構成等のセンシティブ情報も散見される」とのことである。これらの情報は、無断で収集するだけでも個人情報保護法上の問題があることはもちろん、さらに報道されたような内容が実在するとすれば、名誉毀損、プライバシー侵害等の刑事罰の対象になることは明白である。JALFIOは、個人からの情報開示の求めには応じる旨表明しているが、JALFIOの報告書からは刑事訴追の対象となり得る、との認識が全く感じられず、証拠隠滅の意図さえ疑われかねない。事件を個人情報保護法に係わる法違反だけに矮小化する姿勢では、更に事態は混迷を深めるとともに、世論から重ねて糾弾されるであろう。

いくら「組織的な関与」を否定しても会社は責任を回避することは出来ない

会社の報告書は「JAL労働組合に対する業務情報・個人情報の不適切な提供等については、会社からの指示や組織的な関与はなかった」としているが、客室本部管理職と契約制客室乗務員を管理する東京空港支店フライト旅客部担当者が十数名も関与している事実は、明らかな組織的関与を示している。事態の早期収拾と沈静化を狙い、組織責任を回避する姿勢は社会から厳しい目を向けられるであろう。後に述べる「使用者による組合への支配・介入」の観点では、仮に会社の指示がなかったとしても会社の責任は免れない。労働組合法第7条(不当労働行為)の主旨は、直接に経営者が指示することを禁じているだけでなく、経営者に対し社員の誰もが不当労働行為を行うことを防止すべき責任を課している。会社は組織責任を認めた上で、効果的かつ抜本的な再発防止措置を取らなければならない。

客室本部の組合支配介入と、
それをJALFIO幹部が容認したことへの認識が希薄

JALFIOの報告では「1998年9月〜2003年9月までは、執行部が組合役員OB管理職と意見交換を行い、種々の情報を聞き取った」とされており、同じ部分が会社の報告では「1999年より2003年にかけて、JALFIO出身の客室本部に所属する管理職が組合OBとしてJALFIO執行部との間で定期的に情報交換を行っていた」とされている。すなわちいずれも「違法な情報の伝達および収集」の事実を認めている。しかし両報告書とも、一連の行為が客室本部による組合への支配介入に当ること、及びJALFIO幹部が自らその行動を容認し、会社と一体となって違法行為を行っていたことになる、との認識が希薄である。
JALFIOはこの情報を「客乗組合員や非加入者の加入促進を図るために作成した」と認めており、会社も「JALFIOの求めに応じて情報を提供した」ことを認めている。つまり会社は客室乗務員を、所属している組合から他の組合へ移籍させる目的で情報を提供したことになり、JALFIO幹部は会社の行為が明白に、労働組合法第7条で禁じられた「労働組合の支配介入」にあたることを承知で情報提供を求めたことになる。この事実の意味することは重大であり、かつ会社・JALFIO双方の報告書にこの観点が全く触れられていないことは大きな問題である。

収集されたデータが、
昇格差別など客乗組合の弱体化に使われた疑いは濃厚

JALFIOの報告書によると、1996年頃から始められたリスト作成の目的は「一定規模の脱退があったこともあり、客乗組合員や非加入者の加入促進を図ることを目的に客乗組合の執行部経験者や加入の可能性のある人について、手書きの情報をデータとして整理するため」だったとしている。また会社の報告書では、収集データは組合役員OB管理職も人事管理の参考資料として所有し続け、組合所属による昇格差別など、利益誘導と不利益扱いを使い分けた不当労働行為が行なわれた疑いが極めて濃厚であるが、その点には全く触れていない。
言うまでもなく、JALFIO組織拡大と客乗組合の弱体化の目的は、兼子前CEO体制下での労働条件切り下げ提案の中、それに反対の意思を示す客乗組合に対して、JALFIOの組織維持と拡大をもって経営と一体となって経営施策を推進するためであったことは明白である。労働者の権利と労働条件を守るべき労働組合が、逆に日航内の労働者の団結を阻害する行為をしてきたことについては、卑劣きわまりないと言わざるを得ない。労働組合が組織を強化するために行うべきは「職場の要求をもとに、経営と対等の立場で交渉し、要求実現に向け活動すること」であり、会社の支配介入に同調し、他の組合を卑劣な手法で弱体化することなどでは断じてない。機長組合は真の日航再建を進めるためにも、労働組合の目的を踏み外したJALFIO幹部を許すことは出来ない。

未だに懲りずに開き直るJALFIO幹部に、再発防止策など任せられない

JALFIOは報告書の中で「リスト保有者に対し破棄を依頼するとともに、リスト個人情報が客室乗務員とその関係者、もしくはJALFIOに被害を生じた場合には法的措置をとる」と述べ、ホームページにもその内容を掲載しているが、この主張に至っては情けない、また許せない開き直りとしか言いようがない。
JALFIOは「漏洩の経路は特定できない」として、情報の取り扱い管理が極めて杜撰であったことを認めながら、現在、自らが客室乗務員から刑事訴追される立場であることも十分に認識せず、JALFIOに被害が生じたら法的措置を取ると主張するなどは、盗人猛々しいと言わざるを得ない。漏洩の経路も特定できない中で、不特定多数にわたった可能性のあるファイルからJALFIOへのどのような被害を想定するのか、情報保持と漏洩に最も責任があるJALFIOに一体どのような法的措置がとれるのか、示せるものなら明確に示してもらいたい。漏洩先に情報管理の責任を転嫁することは問題のすり替えであり、今回の事態を引き起こしながら、こうしたことを平然と主張する感覚のJALFIO幹部に、真の再発防止策を取ることなど、決して期待できないであろう。

解決には経営トップの英断とJALFIO組合員の奮起が必要

このように今回の事件は、JALFIO執行部と客室本部の癒着体質が、私たちが長年「客室本部にのみ突出した異常な労務姿勢」と指摘してきたにもかかわらず長年放置されたことから引き起こされたものであり、その意味ではJALFIOの情報保有に直接的に関与した管理職と、管理監督責任のある二人の役員の処分だけでは効果的な再発防止措置たり得ない。
まず経営は客室本部の「組織的な関与」を認め、本件に直接関わり、あるいは情報保有を知りながら放置してきた管理職を全員解任するとともに、状況を緊急に改善することが必要である。
また、JALFIOの報告書には「4月下旬に臨時組合大会を開催し執行部の信任・不信任を問う」としているが、現在の役員の保身に汲々とした、潔さの微塵も見られない方針である。あわよくば大会の禊を受けて責任を回避することを狙った方針では、日航内全ての職場から一切の賛同は得られない。当然、現JALFIO執行部の辞職が必要である。
さらにはこの際、支配介入が行われた時期のJALFIO幹部も潔く進退を明らかにしなければならない。子会社・関連会社の役員などに納まり、平然とこの事態を傍観する姿勢は人間としても失格であり、全日航人はそのような居座りを許さない。
しかし、このような緊急の対処だけでは問題の根本は解決しない。すでに述べたように「会社が支配介入行為を行い、組合幹部がその行為を容認しかつ同調した」のであるから、労働組合法第2条および第7条に照らして、JALFIOそのものが法内労働組合であることに疑問が生じたことになる。JALFIOは所定の手続きにより組合を解散し、新たに民主的な組合活動を担っていく有志に組合の再編成を委ねるべきである。
一方、客室本部の組織としての責任も重大である。組織内の管理職が個人情報保護法、刑法、民法、労働組合法に違反する行為を行い、それが社内で認知されたにも関わらず、組織としての関与を臆面もなく否定し、関与した個々人の責任を問うだけでは抜本的な再発防止策にはなり得ない。最早、客室本部に自浄作用は期待できず、その存在は日航再建のために百害あって一利なしであり、組織として解体するしか選択はない。当面は安全推進本部直属の組織とするべきである。
「百年河清を待つがごとし」の言葉通り、この問題に関与した客室本部とJALFIO執行部に任せていたのでは問題を解決することは決して出来ない。機長組合は経営トップの英断を求めるとともに、日航再建に向けて共に頑張っている仲間として、JALFIO組合員の皆さんの奮起を呼びかけるものである。


(参考:労働組合法抜粋)
(労働組合)
第2条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
(不当労働行為)
第7条  使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 (省略)
二 (省略)
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は・・・・(後略)


当面、機長組合は以下の方針に基づいて取り組む

  1.  JJ労組とともに「客室乗務員リスト」に掲載されている客室乗務員(組合所属に係わらず現役・OB・OGも含む)がJALFIOに個人情報の開示を求める運動を全面的にバックアップする。

  2. JALFIOは、個人の請求があった場合は開示するとしているが、突然情報が破棄される恐れも否定できない。今後、民事・刑事事件としての発展に備えて、証拠保存させる取り組みを行う。

  3. JJ労組とともに、データ内容について、プライバシー侵害、名誉毀損等にあたる法違反があったかを分析し、刑事告発を含めて検討を進める。

  4. 社内にこの問題を周知して、JALFIO幹部と客室本部の責任を追及するための行動を、JJ労組とともに企画、実行していく。
    以 上

 

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