「スカイマーク航空 操縦士欠員 大量運休 問題を斬る」

   

―LCCだけに限らない深刻な影―   2008年6月5日

2008年6月3日 新聞各紙・TVが一斉にスカイマーク航空が機長不足により168便欠航することを明らかにしたと報じた。国民の足である公共交通機関を担う定期航空運送事業を営む航空会社としては由々しき事態であり、同じ航空で働き、スカイマーク乗員組合とは同じ日乗連の仲間として情報交換している組合としては看過できない。またこの問題の背景としていわゆる格安航空会社(LCC)が抱える事情が様々に取り沙汰されているが、そうした問題の多くはJALグループ傘下にある関連航空会社にも共通するところである。そして乗員不足と脆弱な乗員計画の問題は本体JALインターナショナルにおいても大きな問題となっている。
 
乗員配置数不足は深刻な安全問題

本来、航空会社は乗員の病気その他の急な事態に備えてスタンバイ乗員を配置し定期運航を確保しなければならない。機長2名の欠員によって長期にわたり多くの便が欠航するという状況は、スタンバイ乗員の枯渇が想像に難くない。そのような状況の中で乗員は「体の具合が悪くても休めない」と追い込まれていく上、乗務時間制限ギリギリまで稼働をあげられ酷使される。

事実、スカイマーク乗員組合の報告によれば、2007年春以降3名の副操縦士が退職する中で、2007年の副操縦士の飛行時間は殆ど800時間を超え中には890時間を超える副操縦士もいる。さらに2008年3月末に7名の副操縦士が退職したあとは殆どの副操縦士が月間85〜95時間もの乗務を強いられ過労による病気欠勤も発生している。そして病気等で欠員が出たときはすでに乗務している乗員に追加の乗務をさせたり、休日を返上して乗務させるなど、日々現場の乗務員の常識の範囲を超える協力で「自転車操業」的な運航をしているとのことである。
 

自転車操業が更なる健康破壊を生じさせ悪循環に陥ることが十分に予想される。こうした運航体制は確実に安全に影響を及ぼしていくことはLCC、大手航空会社を問わず歴史が物語っている。

 

頑張っているスカイマーク乗員、しかしそこには様々な問題が

そのような状況の中でスカイマーク乗員組合は、なんとか新興航空会社を軌道に乗せようと若さ溢れるエネルギーをもって頑張っている。しかし航空に精通しないIT産業出身のオーナー社長のもとで、下記に並べたように常識の範囲を超える不当労働行為が頻発している。
 

    再三の開催申し入れや労働委員会の斡旋合意にも関わらず団体交渉を拒否。

    組合員機長に対して社長自ら「脱退」を強要

    乗員組合の教宣物配布を禁止し、配布を行った乗員組合に対して委員長への懲戒処分。更に不当な賞与カット

    賃金体系の変更について組合員に直接提示し合意を求める。

    雇用体系の変更(副操縦士に発令後一旦退職し、派遣会社に就職して派遣労働者として乗務)についても一切の交渉を行わず、訓練生に直接「同意書」を強要。
 

等々枚挙に暇がない。報道にはないが、こうした会社の労務姿勢は、昨年の3名に止まらず今年の3月末には一挙に7名の副操縦士が退職するなどこれまで多くの乗員を他社へと流失させてきた。(今年7月末に副操縦士がさらに1名の退社確定)
 

なぜ乗員が流失するのか

乗員が退職するという話はスカイマークだけに限った話ではない。JALグループ傘下のJ-AIR、JAC(日本エアコミューター)、HAC(北海道エアコミューター)、RAC(琉球エアコミューター)などにおいても、低い労働条件、過酷な乗務、そして乗務機種への不満などから多くの乗員が退職を願い出て他社へと動いている。

これまで航空会社は、乗員を採用し多額の費用がかかる訓練を行い、資格をとらせ乗員を養成してきた。そして、定期的に身体検査(機長は6ヶ月毎)や資格審査をうけ技量と資格の維持していかなければならない職責を一定度考慮した処遇を行ってきた。

しかし、社会全体がリストラの方向に動く中で、大手も含め賃金の切り下げ・勤務条件の過酷化などをすすめ、更にLCCではパイロットライセンスを自費で取得させるという横暴なやり方まで進めてきた。

こうしたやり方は、目先では効率的に見えても、“乗員の定着度”を著しく下げることになり、ライセンスなりジェット機の型式資格をとる、ある程度の経験時間を得るなどした時点で、より条件のいい航空会社に転籍を求める必然な流れを生んでいる。そして航空経営はせっかく訓練し養成したパイロットをライバル会社にプレゼントするという企業リスクを背負うことになった。

 
JAL本体においても深刻な状況が
こうした乗員流失は、JAL本体においても起こっている。ひとつは外国人乗員の流失であり、もうひとつは日本人乗員の流失である。
JALにはJALWAYSを運航する150人規模の外国人乗務員がいるが、現在、在来機からB747-400への機種移行訓練を行っており、その前後の機会にすでに19
名の外国人乗員がJALを後にした。報道にもあるとおり世界的な規模で乗員不足が起きている中でそもそも契約だけで派遣会社から派遣されている彼等にとってJALは他では得られない乗務経験を獲得できる魅力的な航空会社に違いない。
日本人乗員の流失もまた深刻である。JALとJASの統合以来、その経営姿勢と“再生プラン”の中での人件費施策の強行に対して反旗を翻すように10名以上の機長がNCAなどの国内他社に移った。それもB777やB747-400の査察機長や教官機長も含めてである。今JALでは更なる賃金カットが提案され職場の大きな反発が起きているが、今後、また他社への流失が始まるのは必至と見られている。JAL経営がどのような思いで一連の事態を見たか大いに興味がわく。
 
無責任な行政の姿勢

先に述べたように今回の事態は航空の安全にとって重大な問題である。にも関わらず冬柴国土交通相、航空局の対応は、お粗末につきる。

 こうしたスカイマークの実態については、4月に日乗連が航空局に交渉で伝えており、2ヶ月間も動かなかった航空局が、報道の動きにあわせて、やっと重い腰を動かしてスカイマーク社を呼び出して注意したと言うのが事実である。尤も、面子を潰されたくない航空局は、報道がでる前に「今回の航空局の動きは日乗連の指摘があったからと言うわけではない」とご丁寧に日乗連に連絡してきたそうだ。

 しかもその指導は、「自社、他社便に振り替えるなどして旅客の混乱を最小限にするよう指示した。改善を強く指導していきたい(冬柴大臣)」「乗客の利便性を最優先して」と航空のサービスの観点にとどまっている。スタンバイ配置すら怪しい状況になぜ安全問題と捉え立ち入り検査等しないのか不思議だ。

更に冬柴国土交通相の、「パイロットの辞職は急に決まったことではなかったのだから乗客の利便性を最優先して対策を講じるべきだった」とのコメントは、一人の機長を育てるのにどれほどの年月がかかるかまったくご存じないこと、航空の実情をまったく理解されていないことを世に知らしめた。

 
2008/06/02-20:41 機長不足で168便欠航へ=スカイマーク、6月予定の1割
新規航空会社のスカイマークは2日、機長を十分確保できないことから、6月2日から29日まで運航する予定だった1704便のうち1割に当たる168便が欠航することを明らかにした。予約客に対しては自社や他社の代替便への振り替えや払い戻しなどに応じる。
 現在訓練中の機長が免許を取得するなどして6月30日以降は通常運航を目指すとしている。
 機長不足で大規模な欠航が発生するのは極めて異例。世界的な航空需要の拡大、パイロット不足の中、低運賃を武器にする新規航空会社の人材確保の難しさを浮き彫りにした。 

 

2008年6月3日  時事通信

 

スカイマーク168便欠航、福岡〜羽田便など機長不足で

新規航空会社のスカイマークは2日、パイロット2人が退職して機長の人数が足りなくなったため、6月中に運航を予定していた約1700便の1割にあたる168便を欠航する、と国土交通省に届け出た。このうち、2日は羽田発着の旭川線2便と神戸線2便の計4便が欠航した。パイロット不足で大量に欠航する事態は例がない。国交省はスカイマークに対し、欠航の告知や予約客への払い戻しの徹底を指示した。

 欠航はいずれも羽田発着の4路線で、旭川線40便、新千歳線24便、神戸線56便、福岡線48便。これらの路線はボーイング737型機を投入し、約20人のパイロットで運航スケジュールを組んでいた。

 しかし、5月末に2人が病気治療などを理由に退職し、当面、代わりのパイロットの確保が難しくなったという。予約客には前後の時間帯の便や、他社の代替便を用意するとしているが、影響人員は8000人を超える恐れがある。「2人の退職は予想外だった。乗客に迷惑をかけないよう、早急に体制を整える」(広報担当)と話している。
 

2008年6月3日  読売新聞)

 

スカイマーク:「機長足りない」168便欠航 病気療養・自己退職、突如2人欠員

 「スカイマーク」(東京都港区)は2日、機長2人の退職と病気で通常ダイヤが組めなくなったとして、6月に運航を予定していた計1704便のうち、約1割に当たる168便の欠航を決めた。同日、運航計画の変更認可申請書を国土交通省に提出した。乗員の病気などによる欠航はこれまでにもあるが、国交省によると、これだけ長期に及ぶのは極めて異例という。【窪田弘由記】

同社によると5月、同社の機長資格保持者約40人のうち、いずれもボーイング737の資格を持つ1人が病気療養を、1人が自己都合退職を申し出た。会社側は乗務の可否や満期を迎える契約の条件について本人と話しあったが慰留できず、新たな機長の手当てもできなかった。  

168便の内訳は6月2〜29日に運航予定だった▽羽田−旭川40便▽羽田−札幌24便▽羽田−神戸56便▽羽田−福岡48便。同社は、訓練中の機長の準備が整う7月には通常ダイヤに戻したいとしているが、流動的という。同社は「ご迷惑をおかけして申し訳ない。購入していただいた方には、払い戻しや振り替えで対応したい」と話している。  

国交省によると、近年は世界的なパイロット不足で売り手市場の状態。機長を自社で養成する経営体力のない新規航空会社にとって問題は深刻だ。ある社の幹部は「特に中国での航空需要が旺盛で、機長1人を招へいするための相場が上がっている」と指摘する。  

大型機による大量輸送から中型機による運航回数増加への変化も、乗員の需要に拍車をかけており、スカイマークも「我々の体力では、機長1人にかけられる給与にも限界があり、契約が更新できないなどのリスクを常に抱えている」と話す。  

航空アナリストの杉浦一機氏は「新規航空会社は確かに運賃は安いが、欠航などのリスクがより大きいことを認識したうえで利用すべきだ」と話す。機長不足の問題についても「中国とともに、世界的な格安航空会社の増加も乗員不足に影響している。今後、一層深刻になる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 

2008年6月3日  毎日新聞 東京朝刊

 
スカイマーク168便欠航 6月、機長2人退職で

 スカイマークは2日、5月末付で日本人機長2人が退職したためパイロットが不足し、6月の同社便を168便欠航すると国土交通省に届け出た。同省は届け出を認め、予約客に振り替え便を案内して対応するよう口頭で指導した。欠航は同社の運航数全体の約1割に当たる。定期運航航空会社で、乗務員不足を理由とした大量欠航は極めて異例という。

 国交省は「なぜもっと早くから分からなかったのか、今後報告を求めたい」としている。(02日 22:01)

新規航空会社のスカイマークがパイロットの退職により、今月168便を運休する問題について、冬柴鉄三国土交通相は3日、閣議後の会見で、「パイロットの辞職は急に決まったことではなかったのだから乗客の利便性を最優先して対策を講じるべきだった」と同社の対応に苦言を呈した。

 そのうえで、「自社、他社便に振り替えるなどして旅客の混乱を最小限にするよう指示した。改善を強く指導していきたい」と述べた。冬柴国交相によると、7月以降も運休継続の可能性がある。

 

2008年6月3日  産経新聞

 

読者の皆様のご意見をお寄せ下さい。

皆様のご意見・ご感想がありましたら、 下記のリンク先よりメッセージをお願いします。

 ご意見はこちらからお願いします

 
 

Copyright ©2000-2008 日本航空機長組合 All rights reserved.